生活が苦しくてもペット向けラグジュアリー市場が活況の理由、英国

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家計のやりくりに困っているとしても、ペットのためとなれば出費をいとわないようだ。英国のペット用品のラグジュアリー市場が大いに盛り上がっている。

英国の価格比較サイト「MoneySuperMarket」のデータによれば、英国の飼い主たちは、ペット向けラグジュアリー商品に年間およそ500ポンド(約8万7600円)を投じ、デザイナーブランドの洋服から、高級ベッド、玩具、高級ペットフードなどを購入している。「自分用よりペット用のラグジュアリー商品にお金を出したい」と答えた飼い主は10人中7人に上る。

こうした流れをけん引する一因は、ペットを飼う人が増えていることだ。特にロックダウン中は、多くの人が犬を飼い始めた。UK Pet Food (UKペットフード、旧称:ペットフード製造者協会)が公表した数値によると、英国では、コロナ禍以降にペットを飼い始めた世帯が計320万世帯に上っている。これを受けて、儲けが期待できるペット市場への参入機会が生まれた。

イングランド東部ノーフォーク州に住むカーチャ・シェルは、3年前の2020年に、犬用のラグジュアリー商品を扱うEric & Dolly’s(エリック&ドリーズ)をオープンした。世界中の一流ブランドから仕入れた、おしゃれな犬用グッズをさまざまに取りそろえている(店名は、自身が飼っているボストンテリア「エリック」と、イングリッシュブルテリア「ドリー」にちなんだものだ)。

「飼い主が犬を甘やかして喜んでいるのは、自分がいい気分になるからだ。自分のことはあと回しで、ペットにごほうびをあげている」とシェルは話す。「ある少女は、自分の誕生日にもらったお小遣いで、飼い犬に何か買ってあげたいと考えて来店した。高級な犬用品や洋服、ハーネス、玩具が人気だ。けれども多くの人は、犬にちょっとしたプレゼントを買ってあげることで大きな喜びを感じている」

開店にあたっては立地がカギだった。エリック&ドリーズは、ノーフォーク州の小さな町バーナム・マーケットにある。裕福な住民が暮らしており、活気があってハイエンドの店舗が並ぶ高級住宅地だ。ロンドンの高級住宅地チェルシーにちなんで「チェルシー・オン・シー(海辺のチェルシー)」と称されることも多い。人気の観光地もあり、犬を飼っている人にとても人気がある。

シェルは、順調だった人材採用分野でのキャリアを辞めて、同店をオープンした。ただし、自分でビジネスを立ち上げるのはかなり大変だったようだ。

「小売業で働いた経験がなかったので、在庫を揃えるのはもちろん、レジの使い方すらわからず、学ぶことがとてもたくさんあった。でも、半年が過ぎるころには、顧客が何を求めているのかがわかるようになった。自信をもって客や犬に対応できるし、接客はとても楽しい。犬にハーネスをつけてあげたり、洋服を着せたり、来店した犬をかわいがったりする打ち解けた対応が、ビジネス成功の大きな理由だ」

パンデミックの影響で、シェルのビジネスは難しい船出を迫られた。開店を予定していたのは2020年4月で、ちょうどロックダウンが始まったころだった。6月になってようやくオープンにこぎつけたが、日常が戻ったのは翌2021年だった。

パンデミックが去った今、小売店の前には、物価高騰による「生活費の危機」という最大の強敵が立ちはだかっている。とはいえ、ペットのラグジュアリー市場は事情が違うようだ。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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