ビジネス

2023.06.08 10:00

「内向型人間たちのカリスマ」が本誌編集長に打ち明けた、弱さを晒して得たもの

石井節子

「影響」はつねに双方向

藤吉:インフルエンサーであるチャンさんは、逆に読者からも影響を受けてパワーアップされているように思えます。アラン・コーエン博士、デビッド・ブラッドフォード博士の往年の名著『影響力の法則―現代組織を生き抜くバイブル(原著『Influencing without Authority(直訳=権威なき影響力)』)』にも出てくる「通貨(=カレンシー、以下に「注」)」を受け取っておられるのではないでしょうか。

(注:相手から望むことを引き出す際、権力による圧力や金銭報酬以外に「相手にとって価値のあるものを「通貨(カレンシー)」として差し出し、交換することができるという理論 。参考:https://saylordotorg.github.io/text_focusing-on-organizational-change/s06-01-influence-without-authority.html



チャン:はい、メッセージの流通は本を書いたことで私から始まりましたが、SNSを通じての読者からのフィードバックを含め、今では常に双方向流通です。私を愛してくれる読者から応援を受け、共感を得、それをパワーにしていますね。ネット上では常にヘイト的な書き込みもあるので、深く傷つきはしますが、読者の賛同や愛が支えてくれます。

藤吉:その双方向のやり取りで「価値あるもの」を受け取ったり返したりすることは、意識してやっておられるのでしょうか。

チャン:これまでの人生で多くの先輩たちにポジティブな力をいただいてきました。だから自分が成長してもっとパワフルになったら、かつて私にポジティブな力をくれた先輩方のようになりたいといつも思ってきました。その点では意識的ですね。共感や応援というカレンシーをくださる読者の方たちに囲まれていることは、彼らにお返しのカレンシーを差し出したいという動機づけになる意味で、とても強いインスピレーションになっています。

藤吉
:Twitterを拝見していても、常にポジティブなものを吸収しようとされているのがよくわかります。

弱さの露呈は共感を手に入れる「通貨」たり得る

藤吉:読者から応援や共感というカレンシーを受け取っておられるとするなら、あなたからは具体的に、どんなカレンシーを読者に差し出していると思われますか? 

チャン
:私が読者に何かを与えたとすれば、それは私のvulnerability(脆弱性、弱さ)ではないかと思います。

内向的な私たちは、子供の頃から常に多くの苦労を経験してきました。でも、多くの内向型はその苦労を話したがりません。私は逆に、自分がどういうことで困って大変だったか、苦労したかを共有するようにしています。同じような人たちが「私だけじゃない」「私は変じゃない」と独りごちて、安心することができると思ったのです。



藤吉:私も昔から弱さは、聞かれてもいないのに話す癖がありまして(笑)。その方が誰もが話しやすくなり、盛り上がるんですよね。。ただ、現在は立場が編集長になってしまったので、周りから、自虐的に聞こえるのでそういう話はするなと言われてしまいます。

チャン
:強い立場の人が、「弱みを見せないように」と周囲から求められるところは、国の文化の違いかなとも思いますね。

たとえばアメリカだと、逆に自分はこういうところが弱い、と話すと、人として信頼されるような傾向がある。そして、そういった話をすることによって、部下たちも「じゃあボスを助けよう!」という方向に動いていったりします。

藤吉
:「人は強さで必要とされ、弱さで愛される」という言葉があります。弱さを隠さない方が、確かに信頼関係はつくりやすいですね。そのほうがたしかに信頼関係は作りやすかったんですね。
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構成・文=石井節子 写真=曽川拓哉

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