経済

2023.05.29 10:30

日本投資の「逆張り」で大勝したバフェット、追加投資に勝算は

安井克至
残念ながら、政府からのそうした働きかけはほとんど見られないと言っていい。岸田首相と与党自民党は、就任してからの約1年半、大規模な経済改革に関して実質的な成果を何も上げていない。より広く成長の果実を分配する「新しい資本主義」についての話はしばしば聞くものの、ほとんど行動に移されていない。

岸田首相の前任である菅義偉が首相を務めた1年間も、改革に関しては空白の時期だった。そして残念なことだが、故人となった安倍晋三が首相の座にあった2012年から2020年にかけての8年近い期間についても、同じことが当てはまる。

確かに安倍首相は、容易に達成できる目標に関してはいくつか成果を挙げている。コーポレートガバナンスの多少の強化などは、その一例だ。だが、大半の課題については、施策があまりに曖昧かつ当事者の自主的な努力に依存するものばかりで、経済を好転させるには至らなかった。株主の発言権を多少増す措置についても、日本政府が20年早く実現して然るべきものだった。

そして今、岸田首相は、改革の機運を再燃させる絶好の機会を目にしている。岸田首相率いるチームは、日本への投資をさらに増やそうとしているバフェットの意向に対して、身を乗り出して迎え入れるべきだ。また、しばしば「日本のバフェット」と呼ばれる実業家の孫正義に対しても、もっと国内での投資を行ってもらうべく、働きかけを強めるべきだろう。

岸田首相自身は、ホスト国として、5月19日から開催されたG7広島サミットの準備に忙しかったとはいえ、首相の下で働く経済担当チームは、メディアに続々と登場するべきだ。「チーム岸田」は、サプライサイドの改革について大いに宣伝して然るべきだ。こうした改革には、官僚主義や規制の撤廃、労働市場の自由化、イノベーションの再活性化、生産性の向上、女性の活用、そして世界でもトップクラスの人材の招へいなどが含まれる。

そうすれば、アジア諸国を含む世界中の人々が、日本に注目するはずだ。日本が「経済活動のエンジン」という役割(この役割は、かつての日本から中国が大喜びでさらったものだ)を取り戻す取り組みにおいて何らかの進展を見せれば、アジアは活気づくはずだ。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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