それぞれの企業文化のなかにある無意識の偏見(または「暗黙の偏見」)は、従業員が職場で無意識に取る態度に現れる。そして、それは人材の定着(リテンション)や従業員の貢献意欲(エンゲージメント)、生産性、ブランドへの評価、さらには利益にも、多大な影響を及ぼす。
マネジメント誌ハーバード・ビジネス・レビューとシカゴ大学は、米国の大企業で働く1900人以上を対象に実施した共同調査結果を発表している。それによると、従業員の間に他者への偏見があることに気付いた人が「勤め先に誇りを感じなくなる」可能性は、そうでない人に比べて2倍高くなっている。
また、「1年以内に離職を検討し始める」可能性は3倍、「職場で疎外感を感じ始める」可能性は4倍以上、高まっていた。
職場における無意識の偏見の有無を確認するのは、簡単ではないものの、不可能ではない。以下に、最もよくある無意識の偏見と、それらへの対処法を紹介する。
1. 親近感バイアス
人は経歴や関心事、外見などが自分と似ているように思える人に引かれる。これは「類似性バイアス」とも呼ばれる。自分が特定の人に魅力を感じることに気づいたら、その理由を考えてみて欲しい。また、積極的にフィードバックを行うことで、意見が合わない相手も含めた同僚との共通点を見つけやすくなるだろう。
2. 外見バイアス(ルッキズム)
人は髪の色や身長・体重、あるいはその他の「美しさ」と受け取られるものを基準に他人を判断することがある。学術誌「Behavioral and Brain Sciences(行動・脳科学)」に発表された論文によると、身体的に魅力的な人の方が、面接を受け、採用される可能性が高く、昇進も昇給も早いとされている。ただ、外見バイアスは、その他の種類の偏見よりも対処しやすい。簡単な方法の1つは、採用選考において、写真や容姿に関連性のあるデータの提供を求めないことだ。また、面接前には電話を使用することなどによって、不要な偏見の影響を受けることなく、最も有能な人材を採用することができるだろう。