とはいえ、これまでリモートブラウザー分野の成長速度は比較的遅く、とくに消費者向け市場は時間がかかっている。現在は法人顧客向けサービスが中心となっていて、最近のある調査によると、リモートブラウザーの市場規模は世界全体で41億ドル(現在の為替レートで約5500億円)にとどまっているのが現状だ。それでも、向こう10年は年平均18%のペースで成長し、2033年には220億ドル(約3兆円)規模になると予測されている。
成長の原動力としてラマチャンドランが期待を寄せるのが消費者の需要だ。消費者向けサイバーセキュリティー製品の大手は、リモートブラウザーのような新製品を投入すると既存の自社製品と「カニバリゼーション(共食い)」を起こしかねないため、そうする動機づけがない。逆に、スクウェアXのようなスタートアップ勢には大きなインパクトをもたらせるチャンスがある。スクウェアXは若いネットユーザーやアーリーアダプターをターゲットにするとみられ、その際はインフルエンサーを使ったマーケティングがメッセージを届ける重要な方法になるかもしれない。
入り口は無料
スクウェアXは、基本的なサービスは無料とし、それ以上のサービスに課金するフリーミアムモデルを採用している。アドオンのインストールと1日1時間までの使用は無料、それ以上はニーズに応じて月額8〜15ドル(約1100〜2000円)の料金を支払う仕組みだ。この価値提案によって、スクウェアXは成長途上の分野で急速に勢いを得られると投資家は判断している。今回の資金調達ラウンドを主導したセコイア・キャピタル・サウスイーストアジアは、消費者がリモートブラウザーをより確実なサイバー対策として認知されることに期待を示している。
セコイアのパートナー、アナンダモイ・ロイチョードリーは「いまあるサイバーセキュリティー対策はどれも、ネットユーザーはたまたま保護されたりされなかったりしているだけで、実際にハッカーの被害に遭ったり、お金を失ったりした人は、それこそたまったものではありません。スクウェアXは100%の保護というアプローチをとる初のソリューションであり、どんなに新しく洗練された攻撃であっても、ユーザーは影響を受けずにすむのです」とコメントを寄せている。
(forbes.com 原文)