再生可能エネルギー発電はどこに行く 電力買取制度の終了で自立と成長へ

Getty Images

再生可能エネルギー発電の普及を目的に2012年にスタートし、ある程度の役割を果たした電力の固定価格買取制度(FIT)ですが、再エネ発電業者を守るためのこの制度が逆に競争を邪魔して事業が成長できなくなるという弊害を引き起こしています。そこで、FITから卒業して再エネ電力事業を自立させようという動きが現れました。

世界で初めてブロックチェーン技術により電気の出所(発電所)がわかる電気小売りサービス「みんな電力」を運営するUPDATER(アップデーター)、コスモエコパワー、コスモエネルギーソリューションズは共同実証契約を結び、コスモエコパワーが所有する北海道と長崎県の2つの風力発電所でFITに依存しない電力供給を始めました。

FITは、再エネ発電で作られた電気を電力会社が決められた価格で買い取ることを国が約束する制度です。そうして発電コストが高く不安定で市場での競争力がない再エネ発電事業を保護することで、再エネ発電は立ち消えることなく続いてきました。同時に一般家庭でもソーラーパネルを設置すれば余った電力を電力会社が買い取ってくれるため、ソーラーパネル普及の役にも立ちました。

しかし、再エネ発電業者をいつまでも保護していては業者間の競争が起こらず、いつまでも自立できません。FITには期限があり、風力発電所は20年でFITの保護が受けられなくなるので、さらに再エネ発電量を増やしていくためには、しっかりとした経営基盤ができていなければなりません。

そこで国は、2022年から再エネ発電事業者の成長を目的としたFIP制度を導入しました。固定料金の代わりに、売電収入に応じた補助金を業者に支払うというものです。つまり再エネ発電業者は、これまでと違い市場価格変動を意識した商売を行わなければならず、そこに競争が生じ、自立が促されるというわけです。

みんな電力とコスモは、いち早くFITからFIPへ切り替え、再エネ発電事業の強化を目指すことにしました。コスモエコパワーが長崎県に所有する五島八朔鼻風力発電所はまだ新しくFIT期間は17年ほど残っていますが、あえてFIPへ移行し、みんな電力が電力を販売します。もうひとつ、北海道の礼受風力発電所はすでにFIT期間を満了していて、コスモエネルギーソリューションズがどの電力の小売りを行います。

3社はこの先進事例を通じて、蓄電池なども取り入れつつ電力の安定供給を実現するとしています。また、地元企業や自治体との市場を介さない相対取引による再エネ電気の地産地消を目指すということです。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

ForbesBrandVoice

人気記事