AT車の口火を切ったのはフォードのモデルTです。当時は前進2段、後進1段の半自動変速機が採用されました。その後1939年にはゼネラルモーターズが4段式のATを採用します。1948年にはトルクコンバーターと組み合わされたATが登場し、これが現代まで続くオートマチックトランスミッションの元祖ともいえる技術です。
「昭和のオートマ車」の定番だった装備、いくつ知ってる?
日本では1958年(昭和33年)に発売された岡村製作所の発売したミカサに搭載されたのがATのスタート。翌年にはトヨタがトルコン付き2速セミオートマをトヨペットマスターラインに搭載します。2速からスタートしたATも、今や多段化が進み8速や10速といったものが当たり前になりました。オートマにも長い歴史があり、多数の先人の知恵が詰め込まれているのです。
昔のAT車にはあった「O・D」ボタンって何?
昭和後期から平成の中頃まで、ATのシフトノブには小さな「O・D」と書かれたボタンが付いていました。これはオーバードライブスイッチというもので、4速ATに多く搭載されていたものです。スイッチをONにすると、車は4速ATの状態で走り、OFFにするとギアが3速になるというもの。一般道を走行する場合は、3速ATの状態の方が変速回数が少なく、さらにトルクフルな回転域を使えるため走りやすいのですが、高速道路などの速度が高くなる場所ではオーバードライブをONにして4速ATにし、低いエンジン回転数で走行できるという機能でした。
ただ、4速に入るとエンジン回転数が落ち、トルクバンドをうまく使えなくなることから、高速道路の上り坂などでは、オーバードライブをOFFにして3速にシフトダウンして登っていくことが多くありました。シフトレバーの手元でカチカチと操作できるのが、楽しい装備です。
また、MTの2速発進と同等の機能を備えるため、スノーモードスイッチというものも存在していました。通常は1→2→3とステップしていくATが、スノーモードスイッチをONにすると2→3と1速を飛ばして2速発進できるというものです。
これらは現在のようにトラクションコントロールなどが存在しない時代に、ATをMTの感覚に近づけて人が積極的に制御するための機能の一つでした。