緊急時には必須だった「シフトロック解除ボタン」
オーバードライブスイッチ、スノーモードスイッチ、そしてもう一つ、最近見かけなくなってしまったのがシフトロック解除ボタンです。これは車が故障した際に、シフトレバーをエンジンをかけずにPレンジからNレンジへ動かすためのもの。Nレンジに動かすことができれば車を押して移動させたり、牽引したりすることが可能になるため、当時のドライバーの緊急時対策の知識として覚えさせられた仕組みです。
ボタンではなく、穴が開いていてキーを差し込むタイプのシフトロック解除もありました。この解除ボタンの操作はJAFやレッカー業者、自動車ディーラーでは当たり前に知っているものですが、昭和から平成にかけてはガソリンスタンドでも重宝した操作の一つです。
車内に灰皿が装備されているのが当たり前だった当時、ガソリンスタンドでは灰皿清掃がサービスの一つとして行われていました。ただ、シフトレバーがPレンジに入っていると、シフトの奥にある灰皿が取り出せない車種も多かったのです。
この時、シフトロック解除ボタンを使って、シフトレンジをNまで動かし、灰皿を取り出して清掃するというのが、ガソリンスタンド店員の技でした。現在ではセルフ式スタンドが増えていき、さらに車内に灰皿を標準装備する車も見なくなりほぼ絶滅した技術です。
ガソリンスタンドでのフルサービスが当たり前だった時代の、プロの小技といったところでしょう。
シフトノブの大きなボタンも最近は見かけなくなってきた
近年のATやCVTは、スイッチ操作をするものが増えています。セレナにはボタン式のシフト、プリウスに代表されるようなシフトレバーが、操作後に元の位置に戻るタイプが主流になりつつあり、シフトレバーを縦に動かす機会も減ってきました。また、縦にシフトレバーを動かすタイプでも、直線的に下げていく形式が減っており、ゲート式と呼ばれる鍵状にシフトレバーを動かしていくタイプが多くなっています。
こうした潮流から、シフトノブにある大きなボタンが姿を消しています。このタイプではボタンしながらPレンジからシフトを下ろしていくのですが、教習車などでもプリウスやゲート式ATにしか触れていない若年層は、ボタンを押しながら操作するということを知らない人も多く、ギアチェンジをしようとしても動かないと戸惑う人も多いようです。
昔あったスイッチ類は、現在多数がコンピューター制御の中に組み込まれ、車が自動的に判断し機能するようになっています。今回は昭和の定番装備を取り上げていきましたが、すぐに平成の定番が通用しなくなる時代がやってくるでしょう。
ボタンやレバーを操作するのが好きな世代には、少し物悲しい時代が到来しています。
(本記事はMOBYからの転載である。)