通常、こうした共同体を作るのであれば「コミュニティ」を作って、その輪を広げていくのが定石だ。しかしながら中川は、「エコノミー」であることが重要だと主張する。
「確かにコミュニティ的な拡大はあり得ると思うんですけど、やっぱりそこに経済がついて来ないと健全ではありません。会社という形態で運営し、しっかり利益を出してこそ、社会的な価値となりますから」。このような考え方、実はPARaDEが提唱する「いい会社」の定義に紐づいている。
PARaDEでは『共通善・個別善・利益』、この3つが揃っている会社を「いい会社」だと定義している。共通善というのは地球や社会、人々への配慮。個別善というのはその企業独自のビジョンがしっかり定まっており、全ての行動がそれに紐づいていること。利益を出すことは、人々の役に立っているという証。この3つを兼ね備えている会社が、手を取り合って経済を動かしていくのが、PARaDEの目指す世界だ。
「共通善である地球環境や人権などへの配慮は当たり前に必要なこと。個別善のビジョンについては、もっと各社が真剣に取り組まないといけないという危機感があります。昨今、ビジョン、ミッション、パーパスがブームのように騒がれていますが、言葉を作っても、会社の活動として本気ではないことが散見されます。
中川政七商店の場合は、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンがあったからこそ成長できたという実感、自負があります。2016年には、数年かけて準備をして、上場直前まで進んだのですが、それがビジョン達成の足枷になると考えてやめる決断もしました」
2022年から始動したPARaDEには、しっかりとビジョンを掲げ、上記の3つの要素が揃う11社の「いい会社」が集い、ライフスタイル・エコノミーを拡げる活動を行っている。3月下旬には、それを人々に体験してもらうために、“つくる。買う。選ぶ。の未来”をテーマとした「Lifestance EXPO」が開催された。