起業家

2023.05.05 08:00

英国発のアスレジャーブランド「Gymshark」を生んだ30歳起業家

安井克至

ベン・フランシス(C)Twitter @BenFrancis1992

2021年12月1日、ベン・フランシスは、ロンドン中心部の繁華街、リージェントストリートにある閉鎖されたJ.クルーの店舗前に立っていた。自らデザインした黒いワークアウトジャケットを着たフランシスは、スポーツウェアブランド「ジムシャーク(Gymshark)」の初となる実店舗の出店計画を発表した。

「まるで夢のような瞬間です。自宅の寝室で始めたブランドが、リージェントストリートに店を構えるまでに成長するなんて、感無量です」とイベントの様子を映したユーチューブ動画の中で、フランシスは語った。その10カ月後に店舗はオープンした。

2012年に実家のガレージでジムシャークを立ち上げたフランシスは、SNSマーケティングや、TikTokとインスタグラムのフィットネス系インフルエンサーとのパートナーシップを通じてブランドを急速に広め、同社をアスレジャーの大手ブランドに育て上げた。

彼は、2020年に同社株式の21%をプライベートエクイティのGeneral Atlanticに売却した。このディールにおける同社の評価額は14億5000万ドル(約1930億円)だった。その1年後、同社の純利益は2倍以上の6800万ドル、売上高は78%増の6億800万ドルとなった。

この成長により、フランシスはビリオネアの仲間入りを果たした。フランシスはジムシャーク株の70%を保有しており、その評価額は12億ドルと推定される。現在30歳のフランシスは、フォーブスの2023年の世界の富豪ランキングで最も若い新人となった。

大学を中退したフランシスは、実家からほど近いバーミンガム近郊の町、ソリフルで今も会社を運営している。彼は、1992年にイングランドのウェスト・ミッドランズに生まれ、幼少期はプロサッカー選手になることを夢見ていたという。しかし、自分に才能がないことに気が付いた彼は、17歳のときに地元のジムに入会し、ユーチューブでフィットネス動画を見ることに熱中した。

彼はIT教室にも通い、ワークアウトの予定を管理したり、脂肪燃焼エクササイズにアクセスできる初歩的なアプリを開発した。

「アプリは基礎的なものだったが、私は熱中する2つの趣味において創造性を発揮することができた。2011年当時は競合アプリが多くなかったとはいえ、2つとも英国のアプリランキングで上位に入った」とフランシスはブログで述べている。

フランシスは、18歳でバーミンガムにあるアストン大学に入学し、夜はピザハットで配達のアルバイトをしながら、空いた時間はジムで過ごした。彼は8ドルの時給では満足できず、友人のルイス・モーガンといっしょにサプリメントのネット販売を始めた。彼らは業者から商品を大量に仕入れ、ジムシャークと名付けたウェブサイト上で顧客に販売したが、利益は少なく、厳しい商売だった。
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編集=上田裕資

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