海外

2023.03.24

企業価値1.6兆円のグローバル人材プラットフォームDeelの躍進

Deelの共同創業者でCEOのアレックス・ブアジズ(C)Deel

人事管理(HR)ソフトウェア企業「Deel」の共同創業者でCEOのアレックス・ブアジズ(Alex Bouaziz)は、ソフトウェアスタートアップのCEOであれば誰もが羨むような成長を成し遂げた。海外人材を採用するためのHRソフトウェアを提供する同社の年間経常収益は2021年の400万ドルから、今年1月1日には2億9500万ドルに急拡大した。また、粗利率は85%を超え、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は9月以降黒字を維持している。

Deelは、1月に120億ドル(約1.6兆円)の評価額で資金調達を行ったと発表したが、実際にラウンドを実施したのは2022年第2四半期のことだ。このラウンドについては昨年5月にAxiosが報じており、内容は3000万ドルの新株発行と、株式を保有する従業員の約2000万ドル分のセカンダリー取引だったという。ブアジズによると、この資金調達の主な目的は、故スティーブ・ジョブズの妻、ローレン・パウエル・ジョブズが創設した投資・慈善団体「エマーソン・コレクティブ(Emerson Collective)」を株主に加えることだったという。

「外部投資家に評価額の妥当性を認めてもらうことは、さまざまな面で役に立つ。エクイティの評価が高ければ、より多くの企業を買収することができる」と、ブアジズはいう。Deelは、今回の評価額を利用して、豪州の給与計算企業「PayGroup」を8300万ドルで買収するなど、複数のM&Aをすでに実行している。しかし、彼はエマーソン・コレクティブとの関係構築がなければ、資金調達を行うつもりはなかったという。

なぜならば、同社は過去にアンドリーセン・ホロウィッツやスパーク・キャピタルなどから調達した資金のうち、まだ5億ドル以上を手元に残しているからだ。ブアジズは、エマーソン・コレクティブの出資額についてはコメントを避けた。

グローバル人材の雇用を代行

ブアジズは、2019年にシュオ・ワン(Shuo Wang)とともにDeelを設立した。ワンは、同社のCRO(最高収益責任者)として、営業と海外展開を統括している。Deelは雇用代行業者(employer of record、EOR)で、顧客企業は同社を通じて外国人従業員を雇用するが、従業員に対する法的責任はDeelが負う。顧客企業がDeelに支払う月額費用は、契約社員の場合は1人当たり49ドル、正社員の場合は1人当たり数百ドルとなっている。
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編集=上田裕資

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