健康

2023.04.15

花粉シーズンが世界的に長期化する原因

Shutterstock

日本で進む、無花粉品種の開発

こうした中、日本では、林野庁が無花粉スギや花粉をほとんど出さない少花粉スギの苗木の生産拡大に取り組んでいます。狙いは、花粉を飛散させる既存のスギ林を伐採し、こうした品種に植え替えることで、花粉の発生源を減少させること。2019年までに生産された無花粉及び少花粉スギの苗木は1212万本で、スギ苗木全体の生産量の約5割を占めました。同庁は、今後、2032年までにその割合を7割にすることを目指しています。

無花粉品種開発をさらに効率化させるためには、雄性不稔をもたらす遺伝子とその塩基配列の解明が求められてきましたが、スギはイネの20倍以上大きく、複雑なゲノムを持つことから配列の解読が難しいとされていました。

こうした中、近年のゲノム解析技術の進歩により、先月、森林総合研究所や、東京大学など複数の大学からなる日本の研究グループが、スギが持つ11本の全ての染色体をカバーする塩基配列の解読に成功しました。同研究グループは、約5万個の遺伝子とその位置もほぼ特定し、種を代表する標準配列「参照ゲノム配列」を構築。これにより、有用な無花粉品種の開発・育成が加速するとともに、スギの進化過程の予測や、気候変動の影響予測にも大きく役立つことが期待されています。

花粉飛散の予測や、技術の進歩によるアレルギーを軽減させるための対策や取り組みは、対処療法に過ぎません。根本的な原因である気候変動への対策がとられてこそ、私たちの日々の生活に必要な変化がもたらされるのです。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
過去記事はこちら>>

文=Naoko Tochibayashi, Public Engagement Lead, World Economic Forum, Japan; Naoko Kutty, Writer, Forum Agenda

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事