2015年以降、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)の定めにより、銀行や投資ファンドをはじめとする米国外の金融機関は、米国への納税義務者が管理する口座について、その情報をIRSに報告するよう義務づけられている。このFATCAの下でIRSに報告された機密データを用いて今回の研究を行ったチームは、2018年の時点で、米国納税者のうち約150万人が国外の口座に資金を預けており、その総額はおよそ4兆ドル(約525兆円)に上ると推計している。報告されている米国の金融資産の総計である約80兆ドル(約1京500兆円)の約5%にあたる金額が、こうした国外の口座に預けられている計算だ。
国外に口座を持つ人々
国外に口座を持つ米国人は、まったく異なる2つの集団からなることが、研究で判明した。そのうち大多数は、米国にやってきた移民か、国外で働いている米国人だ。こうした人たちの口座残高は比較的少額であり、口座が置かれている場所も、租税回避地であることはめったにない。しかし、国外にあるマネーのほとんどは、非常に裕福なひと握りの納税義務者が保有管理している。これらはしばしば、スイスやルクセンブルク、ケイマン諸島といった租税回避地に置かれた口座とのパートナーシップを経由している。
2018年時点で見ると、国外口座のうち、低税率あるいは非課税の国(租税回避地)に置かれた国外口座は全体の14%にすぎない。だが、これらの口座に預けられている金額は、研究対象となった国外資産の約半分、金額にして2兆ドル(約260兆円)近くに達する。
米国の裕福な投資家は、租税回避地に法人や信託を設立することで、米国での課税を回避できる。租税回避地の税率は低く、投資所得に課される米国の税金は、おおむね源泉徴収方式を採用していないためだ。
オフショア資産を所有している層は、少数の超富裕世帯に集中している。所得が全体の上位1%に入る層では、おおむね5世帯に1世帯が国外に資産を持っている。さらに上位0.01%になると、この割合は60%以上に跳ね上がる。そして、このごく少数の世帯が、国外口座に置かれている資産のうち3分の1を所有している状況だった。