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2023.04.07

米国の資産525兆円、その多くがタックスヘイブンに隠されている

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ちなみに、研究と同じ2018年の時点で、上位0.1%の世帯の年間収入は77万5000ドル(約1億180万円)以上だったのに対し、上位0.01%では収入額は330万ドル(約4億3300万円)以上に達する(米国税政策センター調べ)。

パートナーシップの役割

こうした国外資産のうちかなりの部分が、パートナーシップによって保有されている。こうした組織が所有するオフショア口座の数は、全体の1.4%ほどにすぎないが、金額で見ると、米国納税者が所有するオフショア資産全体の3分の1近くを占めている。

これらの国外パートナーシップが保有する資産のうち4分の3は、租税回避地に預けられている。また、ほぼすべてのパートナーシップが、ヘッジファンド、プライベートエクイティ企業、投資パートナーシップなど、金融関連のものだった。これらのパートナーシップのうち約43%は、米国納税者が所有するものだった。

対照的に、個人が直接所有する口座は、数では半数以上を占めるが、資産額では全体の16%を占めるにとどまった。

米国人が保有する国外資産のうち口座数の約1%、金額にして14%がCコーポレーション(一般的な株式会社)やその他の事業体によって保有されていた。

FATCAによる報告義務づけは、法律が制定された当初は、国外口座に預けられる金額を減らすことに役立ったようだ。だがその効果は小さく、一時的なものだった。研究の対象となった2018年の時点で、国外口座に置かれている資産額は、2015年以前の水準に戻っていた。

他の研究でも、国外資産の集中について、今回の研究と同程度か、さらに集中度が高まっている実態が浮き彫りになっている(こちらと、こちらの研究結果を参照のこと)。しかし、今回の研究では初めて、FATCAへの全報告を含む、行政機関に寄せられた詳細なデータを用いており、この点で、国外口座の少数サンプルから推定した既存研究と異なっている。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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