FATCA報告制度の不完全さ
今回の新たな研究は、国外口座に預けられている資産に関する重要な議論を前進させたものの、FATCAの報告制度が不完全である状況に変わりはない。米国人の口座所有者の報告に漏れがある金融機関もあるし、逆に、一部の非米国人所有者について、誤って米国人として報告している金融機関もある。今回の研究論文の著者たちも、パートナーシップ形態の資産のうち約5分の1については、その所有者を特定できなかった。また、個人口座のうち42%(金額にして38%)については、特定の所得税申告と結びつけることができなかった。
今回の研究については、批判もある。FATCAによる報告は、国外に蓄えられている資産額を正確に伝えていないという批判だ。FATCAによる報告では、米国投資家が直接保有する国外口座を「米国の個人が国内で持つ(オフショアファンドに出資している)ファンドの口座」とまとめているからだ。
こうした大きな欠落はあるものの、この論文は、国外に蓄えられている資産の大きさと、それを保有する米国人の特性に関して、説得力のある見解を伝えるものだ。論文の著者たちは、米国では、ひと握りの超富裕層が数兆ドル規模の資産を国外に預けており、その主な理由は米国での課税を避けるためだと結論づけている。
とはいえ、不明な点はまだ数多くある。研究者は欠けている情報を補う必要があるが、FATCAによる報告制度の改善がなされなければ、それは不可能だろう。今後さらなる研究が行われることにより、FATCAが、税に関するコンプライアンスを向上させるという、その本来の目的を達成しているのかが明確になるかもしれない。
(forbes.com 原文)