2023.04.04

1920年代の歴史的な食堂車でイタリアの貴族気分を味わう

Getty Images

列車の旅が、再び脚光を浴びている。環境に優しいエコな旅の方法だし、空の旅よりずっと贅沢に思えるものだ。夜行列車の心地いい客室にゆったりと座り、はるか遠い目的地に向けて闇夜を静かに進んでいく旅は、豪華列車を舞台にしたアガサ・クリスティのミステリー小説のようだ。

あとは、豪華な食堂車があればいうことなし。眠りにつく前に、シャンパンと牡蠣を楽しむことができる。

幸い、豪華列車に乗らなくても、そうした夢のような体験ができる場所がある。イタリア北部の丘陵地帯にある5つ星ホテルが新たにオープンしたレストラン「トレノ・レアーレ(Treno Reale:Royal Trainの意味)」だ。

いざ乗車

豪華列車の食堂車を再現したトレノ・レアーレの体験はまず、粋な招待状から始まる。そこには、エレガントな装いで乗車するよう書かれている。

夜8時半。乗客たちは、ミッドナイトブルーに塗られた食堂車の外に集合する。車両の周りでスモークがたかれるという演出付きだ。

真っ白な制服を身に着けたウェイターが、磨き上げられた列車の木製ドアを開けると、サービスの「出発」を告げる汽笛が鳴る。昼間なら少し安っぽく思えるかもしれない演出だが、暗がりだと期待が高まる。

修復された「王室の列車」で夕食を

この食堂車は、イタリア北部の都市ボローニャから30分ほどの丘陵地帯にあるリゾート「パラッツォ・ディ・ヴァリニャーナ」の敷地内にある。

歴史のあるこの食堂車は、巨大なトラックと強力なクレーンを使って、北西部の都市トリノから、ボローニャ近郊の丘陵地帯まで輸送されてきた。

車両自体は、イタリアの王家サヴォイア家のために製造された試作品だった。サヴォイア家はかつて、広大な土地を領有しイタリア統一後に初の王家となった名家だ。

この車両は、レストランに改修すべく購入された時、すっかり古びて壊れかけていた。そこで修復士たちは、史料を参考にしながら、かつての輝かしい姿を想起させるべく、装飾を細かく再現した。

内部の装飾は、見事に絢爛豪華だ。床には華麗な花模様のじゅうたんが敷かれ、窓には高級なベルベット地のカーテンが下がっている。座席にも贅沢なベルベットが使われており、天井には金箔がふんだんに施されている。

暖かみのあるゴールドの照明に照らされた車内と、静かに流れるジャズの音色が、乗客たちを、華麗な1920年代へと誘う。列車が出発するときのガタガタという車輪の音まで流れる演出付きで、少しわざとらしいものの、これも夢のような世界の一部だ。

もっと特別な体験をお望みなら、個室がお勧めだ。18世紀に欧州で流行した中国趣味の美術様式「シノワズリ」風に装飾された部屋で、壁紙は暗く深みがあり、ランプの照明で優しく照らされている。

地元産のワインやオリーブオイルを使ったメニュー

天井を飾っているのは、かつてサヴォイア家が支配下に置いた都市の紋章だ。メニューには、王国内のさまざまなところの料理が並ぶ。

料理は、季節によって異なる。しかし、サヴォイア家の故郷トリノに敬意を表したピエモンテ牛のタルタルステーキや、フィレンツェを州都とするトスカーナ原産の赤ワイン品種サンジョヴェーゼを効かせたリゾットなどが楽しめるだろう。

料理には、リゾートの敷地内で採れたオリーブ油がふんだんに使われている。シャンパーニュ製法で作られた白のスパークリングワインや、同じく敷地内のブドウ畑で収穫されたサンジョヴェーゼ種の赤ワインも提供される。ちなみに、リゾート内の畑に並ぶオリーブの木のサポーターになれば、木に名前を付けることができる。

料理は、サヴォイア家が好んで食べたものと同じではないかもしれない。しかし、食堂車の豪華な装飾が醸し出す雰囲気は、大金を支払ってもいいと思える、楽しく華やかな夜を盛り立ててくれる。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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