しかし、最も羨望の眼差しを集める特典は、なんといってもル・ブリストルの代名詞であるルーフトッププールへの1週間のアクセスパスだろう。プールの設計を手がけたのは、ツェーザル・ピンナウ教授。海運王アリストテレス・オナシスが所有した有名な巨大クルーザーの設計者でもある。
このプールは、通常はホテルゲスト専用であり、例外は一切認めてこなかったとマテイは説明する。「たとえ、隣のエリゼ宮からプールを使わせてもらえないかと聞かれても、お断わりしている」フォーブール・サン・トノレ通りにあるエリゼ宮は、フランス大統領エマニュエル・マクロンが暮らす官邸だ。
ル・ブリストルは、フランスの貴族ジュール・ド・カステラーヌの私邸を起源としている。また、ホテルの名称は、18世紀にラグジュアリー・トラベルという概念をいち早く採用した英国の第4代ブリストル伯爵であるフレデリック・ハーヴィー司教にちなんでいる。
1920年代には、ココ・シャネル、パブロ・ピカソ、ピート・モンドリアン、サルバドール・ダリ、エルザ・スキャパレリ、クリストバル・バレンシアガなどが訪れ、パリの社交界の憧れの場所となった。
業界メディア「ホスピタリティ・デザイン」によれば、2023年に入ってメタバース「ザ・サンドボックス」に最初に土地(LAND)を購入したホテルグループは、オランダを本拠とするcitizenM(シチズンM)だ。シチズンMは「実世界での特典と交換可能なトークン」を資金源として、バーチャルホテルを建設することを目標に掲げた。
ザ・サンドボックスにおける拠点は、デジタル空間におけるプレゼンスであるとともに、NFT作品の展示場としての機能も持つ。その売上は、実世界でのホテルの建設資金にもなり、そのロケーションはNFTコミュニティの投票によって決定される。
シチズンMの最高マーケティング責任者ロビン・チャダーは「メタバースによってここ数年にわたって台頭してきたダイナミクスはさらに加速し、デジタルライフと実生活の境界線は曖昧になるだろう」と述べている。「ゲストのいる場所に出向いて歓迎するのは、私たちの責任だ」
ラグジュアリーであれ一般向けであれ、ホテル業界は本質的に体験重視だ。加えてメタバースは、より没入的に進化をとげたインターネットであることを考えれば、こうしたパートナーシップは理に適っている。
オトカー・コレクションは2022年7月、英ハーパーズ・バザーの元編集者ルーシー・ヨーマンズが立ち上げたファッションゲームアプリ「ドレスト(Drest)」と提携し、メタバースへの進出を果たした。このゲームでは、プレイヤーは高級ファッションブランドのアイテムを選んでアバターに着用させ、写真コンテストで競い合う。こうした写真の背景として、ル・ブリストルや、カリブ海にある「エデンロック・セントバーツ」といったオトカー・コレクションのホテルを利用できるようにしたのだ。
「ル・ブリストル・アンロックト」は4月14日に公開されるが、同ホテルはその前に、希望者の事前登録を受け付けている。登録すると、ブラインド・ドロップ方式で割り当てられたNFTを利用した抽選に、自動的に応募となる。費用は一口1万5000ドル(約200万円)だ。
(forbes.com 原文)