起業家

2023.04.05 08:30

日本発「アメリカンクッキー」ブランドの資金調達 投資家は何を評価した?

——アメリカはプラントベース市場やクッキー市場が日本よりも成熟し、競合も多い環境です。そこへ進出していくOVGOをどう見ていますか。

大きく事業を広げていくために「アメリカは大事だ」というのが前提にあると思いますので、期待しています。

以前、日本で数多くのブランド展開に成功してきた人物と一緒に仕事をしていたのですが、彼女がいつも言っていたことがあるんです。「アメリカ発のブランドは日本に持ってきたら基本的に伸びる。でも、アジア発のブランドを日本に持ってきてもまず伸びない」と。

特に飲食ブランドに関しては、これが当てはまると思います。だから、アメリカでナンバーワンを取ることが世界、そして日本を含むアジアに大きく波及させるという意味でも、すごく大事なことです。とはいえ、みんな(アメリカで)やるっていう発想がないんですよね。

その理由としては、英語ができないとか、アメリカに行ったことがないとか、意外と単純なことだったりします。その点、溝口さんとのCFOの高木さんは海外留学のときの先輩と後輩の関係で、元々海外が大好きなんですね。

2人は以前にこんなことを言っていました。「プラントベースクッキーのリサーチのためにアメリカに行って食べ歩いた結果、これは勝てると思ったんだよね」と。

味がおいしくないものに対して“おいしいもの”は基本、勝つんですね。僕も年間4分の1くらいは海外にいますが、彼女たちのクッキーの味は、間違いなく通用すると思いました。そしてそれは、「おいしいからみんなに食べてもらう」というコンセプトとも一致しています。

店頭に並ぶアメリカンクッキーを中心とした焼き菓子(東日本橋店)

——創業メンバーの経営者としての評価はいかがですか?

それぞれの店舗の状況やスタッフの話を聞いたときにも、とても細かいことまでよく見ていることが伝わり驚きました。

例えば、お客さんはこういうことを欲しているけれど、こういうのがあんまり好きじゃないとか、こういうことやるとスタッフの人たちがやりづらそうでうまくいかないけど、これをやるとスタッフの人たちが一緒に盛り上がってくれる、とかですね。かなりの試行錯誤をしている証拠だと思います。

それは、色々と角度を変えて質問をしても変わらない。たとえ現場にいたとしてもこれができる経営者は、そう多くありません

それから、やっぱり創業メンバーがみんな仲が良いというのが素晴らしい。起業はとても困難なことがたくさんありますが、「このメンバーだったら極論会社が潰れても苦笑いしながら頑張れる」といった絆があって、とても良いチームですね。いつでもOVGOに関する新しいアイデアや妄想で盛り上がっていられるのも、すごいところです。

——今後のOVGOには、どういった期待をしていますか?

商売的には間違いなくうまくいくので、伸び伸びとやってほしいなと思います。アメリカの人たちを日本のおいしいクッキーの虜にしてほしい。

そして、その先には新しい景色が見えてくると思います。彼女たちなら、その景色に対して「もっとこうしたい」といったようにまた新しく夢を膨らませ、どんどんトライ&エラーを重ねて成長していくのではないでしょうか。

——ゆくゆくはアジア展開を見据えていると聞きました。

そうですね。すでに「韓国のあそこにこういうふうに出して……」と妄想しているようです。そんな妄想力はものすごく強みですよね。ワクワク感というのは、ビジネスにおける推進力になりますから。

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第1回 三井物産を辞めクッキー屋さんに 「ovgo Baker」はこう誕生した
第2回 日本の飲食店初の「B Corp」 世界基準のクッキーブランドとは
第3回 クッキーブランド「ovgo Baker」原宿店 Z世代が集まる仕掛けとは
第4回 日本発アメリカンクッキーブランドがNYに進出。その勝算は?
第5回 日本発「アメリカンクッキー」ブランドの資金調達 投資家は何を評価した?(本記事)

文=田中友梨

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