「光害」はそれほど蔓延している。ほとんどの人にとって、ヘッドライトや街灯、防犯灯などの光を眩しく感じることの方が、純粋な暗闇を体験することよりもずっと多い。
世界人口の80%以上が光害の中で暮らしている。北米では80%以上の人が天の川銀河を見ることができないのだ。
多くの人にとって、夜は存在しないも同然だ。都会の夜の明るさが街全体を覆い、ブラインドやカーテンの隙間から差し込んで人々の睡眠を妨げている。鳥や昆虫や野生動物には、死に至る影響を与えてさえいる。そして、いつの頃からか、暗闇は悪いものだと決めつけた私たち人類にも害を与えている。
暗闇は最高だ。そして、ようやくそれが祝福され、今月から「Lights Out: Recovering Our Night Sky」(灯りを消して、私たちの夜空を取り戻そう)と題した展覧会が、ワシントンDCのスミソニアン国立歴史博物館で開催される。
2023年3月23日から2025年12月まで開催されるこの展覧会では、夜空、そして光害による夜空の喪失が、自然生態系から人類文化に至るまで、地球上すべての生命にどのような影響を与えているかを紹介する。
「光害の拡大と蔓延が、私達を取り巻く宇宙を観測する能力をいかに制限しているかを知っていただきたいと思っています」と、展覧会の共同キュレーターで、チャンドラX線観測衛星ビジュアリゼーション・サイエンティスト兼ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの新技術責任者、キム・アーカンド は述べている。「光害のない自然な空を取り戻すために、人々に行動を起こしてもらいたいのです」
夜空の人工的な明るさは、春や秋に渡り鳥の方向感覚を狂わせる。星や月に頼って進路を決められなくなるからだ。展示には、渡り鳥の移動期間中に照明を暗くしている都市の例が複数紹介されている。
また、壮大な夜空の写真や音声による解説、光害の影響を受けている動物の触覚展示、オーディオツアーなどが行われる。夜行性動物のサウンドトラックや、文化によって異なるプレアデス星団(暗い空ではあれほど明るく目立つのに、今や市街地から見ることが困難になりつつある)の解釈を比較するナレーションなど、マルチメディアを使って来館者を夜明けから日暮れまで案内するプログラムもある。
展示は、The World At Night (TWAN)、International Dark-Sky Association、NASA、国立公園局のNight Skies Divisionなどが協力して開発した。
最も重要なのは、光害がこれほどまでに蔓延した理由と、光害は国際ダークスカイ協会が提唱している「責任ある屋外照明のための5原則」を守ることで容易に軽減できるという事実を来場者が知ることだろう。
「人類の夜明け以来、私たちは夜空を見上げて、世界の不思議と神秘に思いを馳せてきました。それはさまざまな文化が祝福し、神聖なものとしてきた強烈な体験です」と、スミソニアン北極圏研究センターの考古学者で本展示の共同キュレーター、スティブン・ローリングは述べている。「この展覧会の目的は、消えつつある夜空が意味することと、それを取り戻すために私達に何ができるかを、立ち止まって考えてもらうことです」
(forbes.com 原文)