復興の歩みに焦点を、福島の「ホープツーリズム」
地震、津波、原発事故による複合災害に見舞われた福島県では、災害の記憶だけではなく、再び立ち上がり復興の歩みを進めている人々の希望に焦点を当て、ダークツーリズムから「ホープツーリズム」と呼び名を変えて、震災の教訓の伝承活動と観光振興に力を入れています。ホープツーリズムは、福島県が7年前に始めた団体向けツアーで、2022年の参加者数は過去最高の1万5000人に達しました。このツアーパッケージには、福島県双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館や、県内唯一の震災遺構である浪江町の小学校、南相馬市の福島ロボットテストフィールドなどの施設視察や見学に加えて、地域住民との対話や交流、ワークショップなどが盛り込まれています。
過去の教訓の伝承が、未来への備え
今年、関東大震災の発生から100年を迎えると同時に、今後30年以内に南海トラフ巨大地震が約70%の確率で発生すると予測されている日本では、防災への関心が一層高まっています。そうした中、来週からは、新型コロナウイルス感染予防対策として講じられていたマスクの着用が、屋内・屋外問わず個人の判断に委ねられることとなり、人の往来が徐々に回復していくでしょう。感染予防対策の緩和が、ダークツーリズムの機運を高める後押しとなることが期待されます。
悲劇の記憶を受け継ぐことは、未来への備えとなり、観光による地域への経済効果をもたらし、寄付へもつながるなど、ダークツーリズムは、被災経験をプラスに転化することができるチャンスを秘めていると言えるでしょう。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
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