「大学発起業家」の卵がピッチ AR手術支援、顕微授精自動化に最優秀賞

「不妊治療で用いる生殖補助医療自動化システムの開発」を発表した、東京医科歯科大学の池内真志氏(写真=田中 振一 / GTIE )

2022年1月に始動した、東京大学・東京工業大学・早稲田大学を主幹機関とした「Greater Tokyo Innovation Ecosystem(GTIE:ジータイ)」。大学や自治体をパートナーとし「世界を変える大学発スタートアップを育てる」プラットフォームだ。

GTIEでは2022年5月に、研究者による事業化に向けたプロジェクトの募集を開始し、17プロジェクトを採択した。各プロジェクトは2022年9月以降、GAPファンドからの資金提供やメンターなどからのサポートを受け、事業化を志向した研究開発活動を実施してきた。

GAPファンドには、グローバル市場を目指していくチームを上限3000万円で最大5件支援をする「グローバル採択」、市場開拓実践を上限500万円で最大4件支援する「ユニコーン採択」、そして上限1000万円で10件程度支援をする「スタンダード採択」がある。

そして3月3日、各プロジェクトの最終発表の場として、「GTIE DEMO day FY2022」が開催された。

“インタープレナー”として社会に変革を

イベントの冒頭では、慶應義塾大学の伊藤公平塾長がビデオメッセージで、「みなさんにはアントレプレナーであると同時に、インタープレナーにもなってほしい」とコメントした。インタープレナーとは、組織同士を繋ぎ、社会全体を変革していく人を指す。

「慶応義塾の創設者である福沢諭吉は、まさに村社会同士を学問によって繋ぎ止め、強い近代社会を作っていくことを提唱したインタープレナーでした。アントレプレナーには、自らの成功を追い求めることはもちろん、その成功を通じて社会全体の変革を目指し、世界を変える活動をしてほしいと思います。そのときに大きな助けとなるのが目標や志を同じとする同志です。

本日集まったアントレプレナーはまさにその同志。『学問のすゝめ』でも『人間(じんかん)交際の仲間に入り、その仲間たる身分をもって世のため勉むるところなかるべからず』と述べられています。今回のイベントが人間交際の仲間となる場になることを祈念します」(伊藤氏)
 
イベントでは、5つのグローバル採択プロジェクトと2つのユニコーン採択プロジェクトの代表者による英語のピッチ、そして10のスタンダード採択プロジェクト代表者による日本語でのピッチが行われた。材料開発や創薬、診断支援のAIなどといった領域での事業化を目指す、計17チームが参加。クライマックスとなったAward Ceremonyでは、優秀プロジェクトが発表された。

グローバル/ユニコーン採択:授精作業を自動化

表彰では、グローバル/ユニコーン採択プロジェクトとスタンダード採択プロジェクトから、それぞれ1つの最優秀賞が選出された。グローバル/ユニコーンで選出されたのは東京医科歯科大学の池内真志氏による「不妊治療で用いる生殖補助医療自動化システムの開発」。
 
現在、不妊治療では、タイミング法や人工授精が成功しない場合に「顕微授精(顕微鏡で良質な精子を選び、卵子に注入する)」が行われる。しかし、これには熟練の操作が求められ、担当する胚培養士の不足や成功率のばらつきといった課題もある。同プロジェクトは、精子の選別と顕微授精作業をAIや専用の器材によって自動化し、胚培養士不足の課題解決や治療成功率の向上を図るものだ。
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文=小谷紘友 編集=露原直人

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