乗客がソーシャルメディアに投稿した動画には、客室に煙が充満する様子が映っている。乗客のひとりは地元テレビ局に「真向かいの手荷物棚から煙が出ているのが見えましたが、何が起きているのかわかりませんでした」「機長は実にすばやく空中から避難させてくれましたが、地上に着いて安全とわかるまですごく怖かったです」と語っている。
We are safe after a scary fire broke out during our @SpiritAirlines flight. We made a quick decent and emergency landing into Jacksonville. After waiting for over an hour they grounded the plane and we had to find our own way to Orlando. All rental cars were sold out. $250 uber pic.twitter.com/miFrR2bPKq
— Joseph Fleck (@nottajshow) March 1, 2023
機内でのリチウム電池の異常発熱は今では1週間に1回以上のペースで起きている。米連邦航空局(FAA)のまとめによると、2022年には米国の航空会社からこうした事案が少なくとも少なくとも62件報告された。前年は54件だった。FAAは、リストに掲載しているのは「FAAが把握しているリチウム電池関連の発煙や発火、過熱の事案にすぎず、こうした事案のすべてが網羅されていると考えるべきではない」と注記している。
リチウムイオン電池で動く個人用電子機器が増えるなか、機内での異常発熱などの事案も過去10年で急増している。2014年にはFAAへの報告例は年間で9件にすぎなかったが、2022年にはひと月で9件報告された月が3回あり、1日に複数報告されることもあった。
昨年の事案をみると、大半は早期に発見され、発着が少し遅れるくらいで済んでいるが、なかにはフライトの大幅な乱れにつながったケースもある。一例を挙げると、2022年8月26日、LCCのサウスウエスト航空便は、機内の座席下に置かれていたハンドバッグの中のモバイルバッテリーから発煙・発火したため、行き先変更を余儀なくされたうえ、客席の煙のため運航を中止している。
報告例には「熱暴走」という用語が頻出する。これは発熱が発熱を招き、温度の制御ができない状態になる現象をさす言葉だ。もうひとつよく登場するのが「防火バッグ」。過熱した電池式機器を封入できる袋で、2016年に韓国サムスン電子のスマートフォン「Galaxy Note 7」で発火が相次いだ問題を受けて航空機で広く採用されるようになった。
FAAによると、リチウム電池は損傷したり端子がショートしたりすると発火するおそれがある。FAAは、スマートフォンやタブレット端末、カメラ、ノートパソコンなど「リチウム金属電池やリチウムイオン電池を含む機器は機内持ち込みの手荷物にする」よう求めており、預け入れ手荷物にする場合は「電源を完全に切り、誤って起動しないように保護し、損傷しないように梱包しなくてはならない」としている。
充電可能なリチウムイオン電池は電子たばこなどにも使われている。
米労働安全衛生局(OSHA)によると、膨張や亀裂、異音、液漏れ、発熱、発煙といった症状がみられるバッテリーは損傷している可能性がある。FAAは損傷した電池やリコールされた電池については、原則として機内への持ち込みも預け入れも禁止している。
(forbes.com 原文)