みんなに「いいこと」を積み上げる
現在の業態にたどり着くまでに、さぞドラスティックな変革の歴史があったのだろうと想像してしまうが、片山はそんな外野の思い込みをさらりと笑い飛ばす。噴霧器メーカー時代も、限定的ではあるものの、自社製品のついでに薬剤を仕入れて販売する商社機能は存在していた。その比率を高めただけというのが彼の認識だ。「メーカーをやめて商社になります、なんて宣言したことはないんですよ。お客さんにとっていいことをやろう、ニーズに応えようと行動し続けたら、いつの間にか勝手に変わっちゃった(笑)」
人材採用や育成も、会社の経営にとって「いいことをやろう」を積み重ねた結果として、強みが明確な人材が集まり、自律的でチームワークに優れた組織ができただけという感覚のようだ。
片山が社長に就任した後、噴霧器メーカーとしてのビジネスにこだわっていた当時の番頭的立場の幹部は会社を去ったが、それ以外の従業員は辞めていない。
「売れるものは増えたし、いろいろな情報にアクセスできるようにしたし、ツールも与えましたし、何よりお客さんからありがとうしか言われないようになりましたから。給料も成果主義はとらずリニアに増えていく仕組みなので、社員にとってはいいことしかない」
防虫ビジネスを通じて昆虫生態学などのアカデミアの世界とも接点をもち、虫の研究に没頭するほど学生は就職難に苦しめられるという現実を知った。彼らの知識は環境機器の武器になる。採用し、ナレッジを生かしてもらうことが双方にとってシンプルに「いいこと」だと片山は考えた。