国内

2023.02.22

農業を活性化させるには? 注目の経営者が語る「新しい産直」

エムスクエア・ラボ 加藤百合子

2023年、世界はどのように変わっていくのか。Forbes JAPAN 2月号では、日本、そして世界で活躍するさまざまな業界のNo.1に「100の質問」を投げかけた。国際情勢、テクノロジー、ビジネス、金融などの分野で今年の変化予想を大公開。

今回は農産物の地域内流通サービス「やさいバス」を手がけるエムスクエア・ラボの加藤百合子に聞いた。


Q.農業従事者が減少するなか、農業を活性化させるには? 農業におけるDXの重要性とは?

農産品流通では、大量生産・大量物流による効率化やコストダウンを目指した結果、おいしさや生産者のモチベーションが二の次になっている現状があります。東京など、産地から遠く大型物流を経由することでしか食材が手に入らない地域では、出荷から消費まで4、5日かかった野菜が店頭に並ぶ。つまり「価格が高い上にまずい」という状況です。

私達の提供するサービス「やさいバス」は、購入者から直接注文を受けた農家が最寄りのバス停に野菜をもち込みます。その拠点を冷蔵トラックが巡回。購入者もまた最寄りのバス停まで出向き野菜を受け取るシステムです。

分散した需要と供給をマッチングするのはECと同じ。ただ、物流まで分散するとコストも届く日数もかかるので、物流だけ地域内で集約・分散。それが従来の産直との違いです。こうすることで鮮度がよいおいしい野菜が届き、農家と購買者が直接つながるというメリットがあります。

コロナ禍で大宴会の習慣が減るという消費者側の大きな変化に伴い、小ロットで外食向けにつくっていた農家の廃業が続出。生産者の減少に拍車がかかっています。一方、巣ごもり需要で好調な小売業は、地産地消で地域の農家を守ろうとする動きもあります。未来に向けて持続可能な流通にいま一度取り組もうと、やさいバスを採用してくださるところもあります。

新たに農業に参入した若い方を中心に、天候や気温から日々求められる判断をデータでサポートする動きは増加しています。安心な食材を安定して届けるためのIT技術の活用も徐々に進んでいます。世界人口が80億人に達して飢餓率も上がるなか、人類の持続可能性は農業生産の技術革新にかかっています。


加藤百合子◎1974年、千葉県生まれ。東京大学、英国クランフィールド大学を経て、NASAのプロジェクトに参画。帰国後、キヤノン入社。2009年エムスクエア・ラボを設立。

文=堤 美佳子

この記事は 「Forbes JAPAN No.102 2023年2月号(2022/12/23発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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