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映画

2023.02.11 11:00

ブラピ主演の最新作「バビロン」、100年前のハリウッドが舞台

ハーバード大学以来の盟友が音楽を担当

「バビロン」という作品は、映画史にも題材を得ているが、興味深いのは初期のハリウッドでの撮影風景を再現した場面だ。

まだ常設のスタジオは建てられておらず、雨の少ない天候を生かして野外にセットをつくり、いくつかの撮影隊が共存しながら映画づくりが進んでいく。冒頭の華やかなパーティとは対照的で、その原初的な風景は当時のロサンゼルスという新興都市の姿にも重なる。

作中に流れる音楽も特筆ものだ。ノスタルジックに傾くことなく、現代にも通じる斬新な音楽で作品に命を吹き込んだのは、「ラ・ラ・ランド」でも音楽や歌曲を担当したジャスティン・ハーウィッツだ。チャゼル監督とは、ハーバード大学以来の盟友だが、この作品でも、当時の音楽にリサーチを重ね、大胆なアプローチで臨んだという。チャゼル監督が語る。

「当時に根差しながらも時代錯誤にならないように、その時代に対してわれわれが持つ概念を押し広げるものでなければならなかった。これまで映画でお馴染みのチャールストンやフォックストロットといった典型的な表現から一線を画すこと、それが僕らの音楽に対する基本方針だった」

ジャズをフューチャーしながらも、劇中のパフォーマンスには時代を超えた響きがあり、この「古きを温めて新しきを知る」という試みが、「バビロン」という作品に確かな普遍性をもたらしている。物語に古色蒼然としたものを感じないのは、このハーウィッツの音楽が寄与しているかもれしない。

2月10日(金)から『ラ・ラ・ランド』監督が贈る“最高のショー”が公開中!(C)2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

それにしてもブラッド・ピットという俳優にはハリウッドがよく似合う。1950年代のハリウッドを描いた「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(クエンティン・タランティーノ監督、2019年)では、落ち目の人気俳優に付くスタントマンという役柄だったが、一転、この作品ではサイレント時代のスター俳優を演じている。どちらもしっかりと役にハマっており、実に味わい深い演技を披露している。

今回のアカデミー賞では主要賞である作品賞からも監督賞からも無視されたかたちの「バビロン」だが(作曲賞、衣装デザイン賞、美術賞でノミネート)、この映画の変革期を描いた叙事詩的作品は、個人的にはやはり好みだ。3時間超の上映時間は映画館の椅子に座るのには覚悟がいるとは思うが、自分としては特に苦痛ではなかったことを付け加えておきたい。

文=稲垣伸寿

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