売上高5.5%減の衝撃、iPhone後の成長戦略を問われるアップル

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Apple(アップル)は2月2日、2023年会計年度第1四半期(2022年12月31日締め)の業績を発表した。その内容は、ここ何年の中でも最も低調なものだったが、同社はこれを、自社ではコントロールできない要因によるものだったとしている。

しかし、今回の四半期決算で売上高が5%以上も下落したのには、それ以外の要因があるとも考えられる。アップルは企業が成長していく上で、最も基本的な大原則の1つを破っている。それは「顧客は、自身に最大の価値を提供してくれる製品に切り替える」という原則だ。

先日、筆者が授業を持っている大学の学部生に話を聞いたところ、その多くは、iPhoneを通じてアップルの「エコシステム」に閉じ込められている自分が愚か者のようだと、率直な思いを打ち明けてくれた。彼らも、もっと手頃な価格で、高機能の製品を手にしたいはずだ。

アップルのビジネスは基本的に、顧客を自社のエコシステムに囲い込むことで成り立っている。iPhoneは初登場から15年以上が経った製品だが、その売上は、アップル総売上高の実に56%を占めている(数字は直近の四半期)。

一方で、iPhoneが競争を繰り広げているスマートフォンという市場は縮小している。ウォールストリート・ジャーナルによれば、2022年第4四半期におけるスマートフォンの出荷台数は、前年同期比で18%減を記録したという。

実際のところ、アップルの成長に問題が生じている原因は、マクロ経済環境や、サプライチェーンのトラブルなどではない。そうではなくアップルは、かつて同社を唯一無二の存在にした強みが、今となっては売上減少の要因になっていることを認めるべきだ。2013年に筆者が指摘したように、その強みとは、たゆまぬイノベーションによって新たな道を切り開き、これを成功に結びつける能力だ。

簡単に言えば、アップルが2007年、自社製品のiPodをカニバリゼーションするかたちで初代iPhoneを世に送ったのと同様に、同社は今、あえてiPhoneの地盤を破壊することで、売上を増加に転じさせる新たな製品を生み出す必要があるということだ。だが、ティム・クックがアップルの最高経営責任者(CEO)でいる限り、そうした変革は起きないように思われる。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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