米サンフランシスコを拠点とする同社は現在、仏Danone(ダノン)や、メキシコの食品会社Grupo Bimbo(グルーポ・ビンボ)、チリのフードテック企業NotCo(ノット・カンパニー)など、消費者向けの有名食品会社と提携を協議中だ。米食品医薬品局(FDA)から承認が下り次第、今後2年のうちに、持続可能な食用着色料を市場に送り出すことを目指している。
マイクローマは2019年に、リッキー・カッシーニと、博士号をもつマウリシオ・ブライアによって共同創業された。タンパク質を量産できる方法として注目を浴びている「Precision Fermentation(精密発酵)」という技術を活かし、mushrooms(キノコ)から優れた色素を抽出している。
同社はこれまで、赤の着色料「Red+」の開発に成功した。熱に強く、pHの値を問わず安定して使えるという。青や白も、現在開発中だ。
こうした特徴があるため、加熱殺菌や調理、加圧押出など、強度の処理を施しても退色しないと、マイクローマは胸を張る。天然色素であるベタレイン(ナデシコ目の植物に存在する色素)やカルミン酸(カイガラムシ中に存在する色素)、アントシアニン(植物界に広く存在する色素)などとは違う大きな利点だ。
天然色素は、他にも存在する。たとえば、昆虫から色素を抽出することも可能だが、ヴィーガンには適さない。また、大きな問題となっているのが、通常は石油からつくられる合成着色料だ。米国では承認もされ、お菓子や焼き菓子に使われているが、実は深刻な健康被害をもたらすリスクがある。
米国では最近、公衆衛生の運動家や科学者たちがFDAに対して、石油からつくられる合成着色料「赤色3号(エリスロシン)」の使用禁止対象を拡大するよう強く求めている。赤色3号は、米国では化粧品での使用が禁止されているが、食品や、口から摂取する医薬品やサプリメントでも禁止されるべきと訴えているのだ(欧州食品安全機関は、食品添加物としての使用を基本的に禁止している。日本では、食品添加物だけでなく化粧品や医薬品での使用も認められている)。
こうした動きは、マイクローマにとって幸先のいいものだ。消費者からは、天然原材料や、クリーンラベルを求める声が上がっている。
市場調査組織によれば、天然着色料の世界市場は現在、20億ドル(約2640億円)規模だが、今後10年で年平均成長率7.4%の伸びをみせ、2033年には41億ドル(約5420億円)規模に達する見込みだ。
マイクローマはまた、サステナビリティを事業の中心に据えており、キノコに与える栄養として農業廃棄物を使っている。「キノコは自然界の有機物分解者として非常にすぐれている」とカッシーニは話す。「おかげで農業廃棄物は、価値の高い材料へと生まれ変わる」