「賃上げ倒産」急増の兆し、二極化する中小企業

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このごろ「賃上げ倒産」という言葉を聞くようになりました。従業員の給料を上げたことで経営が破綻した、という意味ではありません。賃上げができないため有能な社員が離職し、事業が立ちゆかなくなるという、あまりにも悲しい倒産です。そんな賃上げ倒産が、今後急増する兆しがあると、信用調査会社の帝国データバンクは警告しています。

帝国バンクが行った、2023年2月時点までの負債1000万円以上の法的整理(裁判所の監督下で倒産処理)を行っている企業を対象にした調査によれば、2022年に判明した人手不足による倒産は140件ありましたが、そのうち従業員の退職や離職が原因となった「従業員退職型」の人手不足倒産は少なくとも57件(約40パーセント)。2021年の111件中46件(41.8パーセント)から続いて高い水準になっています。また、人手不足倒産の件数は、ピークだった2019年から3年ぶりに増加に転じています。

従業員退職型の倒産でもっとも多い職種は建設業でした。業務に不可欠な資格を持つ技術者が安い給料に耐えかねて離職してしまい事業運営が続けられなくなるという、まさに賃上げ倒産です。賃上げ気運の高まりにより、体力のある企業は賃上げを実施する一方で、その余裕のない中小企業では、有能な社員が高賃金な企業へ流れていってしまうという二極化の様相が見られると帝国バンクは指摘しています。

賃上げできない理由が、原材料費の高騰によるコスト上昇分を価格に転嫁できないためだとしたら、これはその企業だけの責任ではないようにも思えます。社会全体の問題として意識しておくことが大切でしょう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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