グーグルが国家の監視から人々を守る「ジグソー」部門を縮小

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オンライン上のヘイトスピーチや誤情報を排除し、市民社会を監視から守るためのツールを製作しているGoogle(グーグル)の一部門が、社員の3分の1以上を削減したとことが、1月にAlphabet(アルファベット)を解雇された3人の元従業員の証言で明らかになった。これらの社員は報復を恐れ、匿名を条件にフォーブスの取材に応じた。

2010年に「Google Ideas」という名称で設立されたシンクタンクのJigsaw(ジグソー)は、抑圧されたコミュニティや非営利団体を保護することを目的としている。しかし、以前は50人いたJigsawの従業員のうち少なくとも20人が会社を去ったという。アルファベットは1月に全社員の6%を削減したが、Jigsawはそれよりも厳しい打撃を受けたことになる。

「Jigsawはある種の奇妙な場所に置かれている。今後は最低限のチームで運営を続けるしかない」と、解雇された従業員の1人はフォーブスに語った。

グーグルはGoogle Ideasの設立にあたり、米国務省OBで米連邦国国務長官の政策アドバイザーの経験を持つジャレッド・コーエンを迎え、テロ対策や核拡散防止などの問題からオンラインセキュリティまで、さまざまな問題に取り組んできた。しかし、6カ月前にそのコーエンが亡くなり、人員削減が実施されたことで、元スタッフは今、グーグルが利益を上げないこの部門を縮小することを恐れている。

そうなれば、脅威にさらされているコミュニティを保護するためのツールの開発が脅かされることになる。Jigsawはかつて、サイバー攻撃に直面する非営利団体のための無料のツールを作成した。また、ここ数カ月では、Outline VPNと呼ばれる仮想プライベートネットワークでイランの人々を国家の監視から守っていた。

「我々は、社会のためになるプロダクトを作っていたが、今のグーグルにとって、それらはどうでもいいものになったようだ」と元社員は話した。

グーグルは、レイオフの影響を受ける社員数についてコメントを避けた。Jigsawの広報担当者は、フォーブスの取材にプロダクトの開発は継続していると語り「オープンなウェブへのアクセスを守ることに注力している」と付け加えた。

「株主の利益優先」という批判

Jigsawは2015年にグーグルがアルファベット傘下で再編された際、自動運転部門のWaymoやライフサイエンス部門のVerilyなどと並んで、独立した部門として分離された。しかし、その5年後にJigsawは、アルファベットの収益性の高い中核部門であるグーグルに再び統合された。

グーグルとアルファベットは、ここ数週間で1万2000人を解雇したが、彼らと同様に、Jigsawの元社員らも解雇の理由を聞かされていない。Jigsawは儲け主義ではなく、社会的には有益だがコストのかかる組織であり、それが人員削減の理由かもしれないと2人の元社員は語っている。

Alphabet Workers Union(アルファベット労働組合)は2月2日、同社のニューヨークオフィスの外で、現職および解雇された従業員による集会を開き、人員削減に抗議した。組合員でグーグルのエンジニアであるアルバータ・デバーは声明の中で「グーグルが極めて高い収益性を維持し続けている一方で、我々の同僚たちが突然、暮らしの糧を奪われたことに憤りを感じている」と述べた。「我々はグーグルが株主の利益よりも会社の透明性と労働者の権利を優先することを要求する」と彼は続けた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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