高實:Z世代から支持を得ていることに関しては、グレンの功績はすごく大きいと思いますね。彼はパリで、Y2Kの立役者として非常に注目を浴びているんです。
そのうえ、学生だった90年代からDIESELのアバンギャルドとかパンク性とか革新性に触れて育ってきたそうで、自分の手で当時のDIESELのイメージをリバイバルしたいと、強く思っていたんだと思います。非常によく研究していて、ファーストシーズンのコレクションにはものすごい量のアーカイブが、インスピレーションソースとして取り入れられていました。
そういうY2Kのフィーリングが、Z世代が「待ってました!」と両手を広げるようなスイートスポットに当たったんだと思います。実際、若くないと着られないデザインも多くて。
2021年6月21日に発表された、グレン・マーティンスによる最初のDiesel 2022年春夏コレクションのキールック
シトウ:超ミニスカートで超ローウエストという、安室奈美恵的な。着る人を選びますよね。
高實:あれくらい振り切らないと伝えたいメッセージが伝わらないので、割り切って集中しました。
シトウレイ衣装:デニムジャケット7万400円、 デニムスカート16万5000円、デニムブーツ10万2300円
Z世代は「ブランド」好き?
高實:ファッションショーは、コロナ禍では100人限定など少数に絞って、VIPオンリーみたいな流れがありますが、DIESELのアプローチは真逆です。どれだけファッションを民主化できるかを考えて、昨年9月のミラノのショーでは、会場に約5000人呼びました。そのうちわけは、3000人が一般のファンで、1600人がミラノでファッションを勉強している学生さん。ほかにも、SNSなどではストリーミングで配信しました。そうやってグレンのアバンギャルドなファッションをカスケードして、着られる人を探そうというところにギミックがあるというか。
シトウ:5人にアプローチしたら、そのうち1人しか着られないかもしれないけど、5000人だったら20人ぐらいは着られる人がいるんじゃないかと。
高實:特にZ世代の人たちは感受性が豊かですし、発信力もすごい。それに“ブランド”が好きなんだなと感じます。自分がインボルブできるかどうか、共感を持てるかどうかでブランドを選ぶというか。
シトウ:たしかに、若い人たちはブランドの背景とかイメージをくみ取ろうとしているなって感じはします。
高實:それ以前の世代と違うのは、単純にブランドのロゴをボーンと出したら売れるかというと、そうではないということ。何か自分なりの理解や意識があって、そのブランドが好きだという理由を持っているんです。
シトウ:DIESELって、昔からけっこうメッセージ性の強い広告を出してきてましたよね。ダイバーシティに配慮してモデルを起用したり。そうした姿勢が、今の時代感とマッチしたところもあるのかも。
高實:あると思います。グレンのシーズンキャンペーンのコンセプトには、昔の広告をちょっともじって出してきているものが非常に多いんです。僕らは、いつの何をもじっているかわかりますけど、たぶん若い子には新鮮なんだと思います。