地元の企業が地元の高校生や高専生を連れて、海外のマーケットに行き国際市場を体験させる。ローカリズムとグローバリズムが混ざり合ったところにこの企画の妙がある。彼や彼女たちにとっては地元の企業がグローバルに活動しているというのは魅力的に映るし、それを体感することによって地元企業への愛着も増すだろう。しかも、今回の3人は海外を体験するのもこれがはじめてだった。
MEDICAのTOLIC展示ブースで接客する坂井さんと藤村さん
さて、今回参加した高校生の坂井さんと藤村さんは、MEDICAという国際マーケットに、ローカル商品を持ち込むというなかなか興味深いことを試みた。それは酒粕クッキーと酒粕ドリンク、文字通り酒粕でつくったクッキーと飲料だ。
高校生の坂井さんと藤村さんがMEDICAの会場でノベルティーとして手渡ししていた酒粕クッキー
2人はともに高校で「酒粕プロジェクト」という地元の酒粕を広める活動を行っているのだが、今回のMEDICAでは酒粕クッキーをノベルティーとして手渡し(ラベルはMEDICAのために英語表記のものにした)、現地で原料からつくった酒粕ドリンクを、ブースを訪れた人に振る舞うサービスをした。つまり、高校生のアイディアがTOLICのブースを賑わせたわけだ。
また高専生の上野さんは、コロナ禍で、籍を置く一関工業高等専門学校が遠隔授業を続けていることにやるせなさを感じ、こうなったら学内ではなくその外に出て行ってそこで勉強してみようと思い立ち、2020年にTOLICのカンファレンスにオンライン参加した。
これがいい刺激になったようで、2021年8月には夏季インターンシップにも参加。2022年8月には、TOLICのロボット技術のプロジェクトに技術職として参加、MEDICA行きにも選ばれた。今回、上野さんは、前述の酒粕クッキーにロボットで焼き印を入れている。つまり、この酒粕クッキーというTOLICのノベルティは、研修に参加した3名の高校生と高専生の連携プレイの産物なのである。
高専生の上野さんはロボットで酒粕クッキーに印字を
この高校生や高専生たちによるMEDICAでの接客のいくつかが契約に向けて大いに動いている事実にも注目したい。
藤村さんが応対した中国の医療系ディストリビューターからは、アイカムス・ラボの主力商品であるピペッティ(pipetty)の中国市場での独占契約を結びたいという要望があり、サンプルを先方に送るところまでこぎつけている。
また上野さんが応対したカザフスタンのディストリビューターからも、ピペッティの国内での独占販売を締結したいと要望があり、こちらはすでに45台の初期ロットを受注するに至っている。もちろん正規スタッフのサポートがあってのことだろうが、海外初体験で、しかも英語での接客ということから考えると、たいしたものである。
卒業したら東京で就職するのか?
さて、先に、MEDICAへ地元の高校生を連れて行くという企画は今回で2回目になると書いたが、1回目に参加した人間はこのMEDICA研修への参加を振り返ってどう思っているのだろうか。そして彼らは卒業した後、どのような人生を歩もうとしているのだろうか。第1回目の2名のうちの1人、長村大樹さんは、現在は一橋大学経済学部の1年生である。一橋大の最寄り駅である国立と僕の自宅のある駅は近い。前にも話をしたことがあるので、連絡を取り、お茶でも飲もうよと誘って、国立のカフェで落ち合った。