キャリア

2023.01.26

私たちは、もっとバグっていいはずだ。「#バグのすすめ」に込めたもの

湯気代表取締役の南麻理江(左)と鈴木やすじろう(右)

そして「何者」かであることを目指す人たちは、しばしば、自分という存在のバランス感覚を失ってしまう。フロイトは「大人にできなくてはならないものとは何か」という問いに「働くことと愛すること」と答えた。

臨床心理士の東畑開人さんは、これを下敷きにしながら「愛すること」が「働くこと」にのみ込まれやすい世界に私たちは生きているといい、両方がバランスよく存在していることが大事と強調する(『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』)。

PDCAを回し、結果にコミットすれば、他者に評価される......そうやって働くことに熱中しすぎて、存在自体を認めあう、つまり愛することを忘れてはいないだろうか。湯気を訪れる人たちも、話し始めて最初の30分くらいは、ほぼ成果や実績の話をしている(ただあなたが存在しているだけで尊いし、こうしてお茶を飲みにきてくれてうれしい。これからもそうやって、声を大にして言い続けたい)。

強固な呪縛にイタズラな「バグ」を「何者」の呪縛と「愛を忘れたアンバランスさ」。かくいう自分たちが、いちばんもがいているかもしれない。「自分だけのモノサシを」と他人には言いながら、数字や肩書などのわかりやすさに流れていく自分もいる。遊びゴコロを再起動するのは実際、難しい。だからこそ今回、「バグ」というライトでイタズラな言葉を選んでみた。

強固な固定観念や焦燥感に、同じくらい強固でまじめな何かで対抗するのではなく、違うモードで仕掛けてみたいのだ。横断歩道で「白」だけ踏んで歩いてみる、家族や恋人と政治や性の話をしてみる......。方法は何でもいい。日々のルーティンからのちょっとした変化で、これまで見えていなかった選択肢が浮かび上がったり、世界の見え方が変わったりするはずだ。

湯気を訪れる“迷い人たち”からはじまったこの企画を通じて、読者の皆様とキャリアや人生を切り拓くためのヒントを一緒に探し、喜びあえたら、これ以上うれしいことはありません。愛すべき生まじめなあなたへ、私へ。「私たちは、もっとバグっていいはずだ」


南麻理江◎湯気代表取締役・編集者。1987年生まれ。博報堂でインターネット広告のセールス等に従事した後、2017年よりハフポスト日本版にて記事や動画、イベントの企画・制作に携わる。SDGs番組「ハフライブ」のホストも務めた。

鈴木やすじろう◎湯気代表取締役・プランナー。1983年生まれ。WEB系広告代理店の営業職の後、同社から独立したdocksに参画。経営や事業戦略に携わる。2018年よりハフポスト日本版でセールス責任者、規事業開発担当などを務めた。

文=湯気

この記事は 「Forbes JAPAN 特集◎私を覚醒させる言葉」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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