起業家

2023.01.18

「AIの暴走」抑止で起業 ハーバード卒日本人が米国で得た確信

Robust Intelligence創業者の大柴行人(撮影=藤井さおり)

日本では2021年に経産省が「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」を、金融庁が「モデル・リスク管理に関する原則」を公表。2022年夏以降は、ソフトバンク、パナソニック、東芝などが相次いで「AI倫理」についてのポリシーを発表しています。

──日本でも「AI倫理」に対する関心は高まっているんですね。

特に大企業はデータも多く、AIの活用も進んでいて、仮に情報管理で何らかの不祥事があれば社会からのバッシングは避けられません。そのため、AIリスクへの関心は高いです。

ただ、AIに直接的に関与していない経営者層とリスク管理者のほうが、危機意識は高いように思います。 彼らは、企業として問題が起こった際、最終的に自分たちが責任追記される。だからこそ、なんとかして安全にAIを管理しようという気持ちが強いのかなと感じます。

「ありがとう」を聞いて確信を持った

──その企業の危機意識に応えるかたちで、事業を立ち上げましたね。

アイデアはいくつかありましたが、最後は「市場の先行き」で決めました。当然、僕らは研究を行うなかで事業として可能性があると信じていましたが、第三者からの反応を見て、その思いは確信に変わりました。

まだ製品もできていなかった頃からアメリカで、企業にプレゼンをしていたのですが、大手金融機関の重役など一部の人たちが、僕たちに対して「ありがとう」とお礼を言ってくれたんです。

当時、AIに関する売り込みでは「これがあなたたちの課題を全て解決します」といったものが多かったそうで、僕らだけが正直にAIの脆弱性を語っていた。それで「ありがとう」と。こうした声に背中を押してもらいました。



会社ではよく「directionally correct」、つまり方向性として正しいかどうかを話します。経営をしていると、社員の業務や成果など詳細に目が行きがちになる。でも、そもそも事業が時代の波に乗れていないと、頑張ってもビジネスは成り立ちません。そういう意味では、製品がない時に、語るだけで感謝されたというのは、進んでいる方向が間違いないのだなと感じることができました。
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文=露原直人 撮影=藤井さおり

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