だが都市部の店舗の店長からは違う話をいう。オレオクッキーのような商品は棚に鍵つきで並べられている。消費者は買いたくても棚から商品を出せず、誰かが鍵を開けにこなければならない。人手不足の時代、しかも多くの商品がガラスの向こうに鍵つきで陳列されているため、これは時間のかかるプロセスだ。
オレオだけではない。通常の店舗では何千もの商品が鍵つきで並べられている。店内で最も高級な商品ではないダンキンのコーヒーも守られているようだ。
店舗の店長は、どうしようもないという。泥棒が来て1000ドル(約13万円)以下の商品を盗んでも警察は起訴しない。起訴したとしても、訴えられた泥棒は裁判の日を伝えられ、そして家に帰される。
泥棒はそのことをわかっている。ほんの数分、店内にいるだけで、公然と盗みを働く人を目にする。ウォルグリーン傘下の店舗で店長と筆者が立って見ている間にとある泥棒が商品を集めていた。泥棒は私たちを見て、そしてゴミ袋に商品を詰め続けた。そして代金を払わずに店を出て行った。
この窃盗の様子はこちらの動画で見ることができる。
我々が発してしまっているメッセージ
毎日良い仕事をしようと思った店員や店長が、商品が泥棒によって店の外に持ち出されるのを見ているだけというのは想像し難い。
刑事司法制度において貧しい人々が不当に扱われているのは事実であり、金のある犯罪者の待遇が良くなることはあってはならない。
だが我々の解決策はうまく機能していない。
企業は店舗での犯罪を少なく記録しているが、部分的には多くの窃盗が起訴されないために記録されないのだ。
宝石店が高級品を鍵つきで保管するのは理に適っている。それは単に盗難を防ぐだけでなく、商品を見にきた人を購入者に変える訓練を受けた店員と顧客がやり取りすることになるからだ。しかし、オレオやダンキンのコーヒーは宝石ではなく、消費者にとってかなり不便だ。
筆者が訪れた店舗では報告されていない盗難が毎日何件も発生している。警備員を配置しても何の役にも立たない。従業員や顧客に暴力や怪我のリスクが発生するため、警備員は犯罪者と関わることができない。
我々は、コーヒーを買うときは店員を呼んでくださいと客にいっている。
我々は、潜在的な犯罪者に「盗んでもいい」といっている。
我々は、店の従業員に窃盗とそれにともなう危険と共存しなければならないといっている。
そして私たちは市民に、盗みを働く人の隣で買い物をしなければならないといっている。あなたはお金を払わなければならないが、彼らは払わない。暴力沙汰になる可能性もあり、そのリスクはあなたが負わなければならない、と。
これらのメッセージはすべて間違っており、我々はもっとうまく対処することができる。
窃盗の件数は報告されているよりはるかに多く、これは企業の問題ではなく、政府だけが解決できることだ。私たちは政府に支払った分をすべて手に入れることはできないが、今は手に入れている以上のものが必要だ。
(forbes.com 原文)