ジャパンシンドロームを抜け出して
読者の中にはこの記事を読み、「ああ、サムスンの取り組みは日本のXX社でも実施しているよ」などと日本企業の事例を思い出した方もいるかもしれない。
サンフランシスコと日本に拠点を置くデザイン会社btrax社長のブランドン・K・ヒル氏は、そのような状況をジャパン・シンドロームと表現した。かつてiPhoneが世の中に出てきたときも、日本の企業は「ああ、日本では数十年前からそのような電話を開発しているよ」とすでに開発に着手していることに慢心して、それを世界に打ち出すことを疎かにしてしまったという。
CES期間中にお会いしたNTT人間情報研究所の木下真吾氏は、「NTTが国際会議などで発表している内容で、マーケットに対してもう少しアピールしたほうが良いものは、イノベーションアワードに応募するなどしてCESをプロモーションの機会とするのも良いかもしれない」と語った。
CESには世界約70カ国、5000近くのメディアが参加しており、面白いプロダクト、世界的な課題に役立つソリューションを探している。そのようなメディアに対して日本の研究、取り組みをアピールする機会としてもCESを活用していければと考えている。
CESではここ数年、Innovation Score Cardという国ごとのイノベーションランキングを発表。その中で日本は参加81カ国のうち25位となっている。ちなみに1位はフィンランドで続いて米国、エストニアである。17項目での評価のうち、日本はダイバーシティ、税制、スタートアップで低い評価を受けている。
日本の企業や大学には、世界的な課題を解決する技術やプロダクトが多く存在している。それらをCESという場でお披露目し、世界課題解決に貢献するとともに、日本の存在感を上げていくことができるのではないか? ジャパン・シンドロームを抜け出して、世界にアピールすることが前提となる機運を作っていきたい。