毎日のサステナビリティを支えるサムスン、パタゴニア
ここまでCESでのスタートアップの取り組みを紹介してきたが、大企業も面白い動きを始めている。サムスンは「everyday sustainability(毎日、サステナビリティ)」を標語に掲げ、日々の生活から節水・節電できるように進めている。
家庭内の消費電力を抑えるためには、よりスムーズに家電同士がつながる必要があり、サムスンはIoT標準規格「matter」に準拠していくことを発表していた。「matter」はAmazon、Apple、GoogleなどのITジャイアントも参加するIoT標準化団体だ。
日本の大企業の参加は現在ないが、日本のスタートアップmui Labは「matter」への準拠を発表したことにより、米国のテクノロジー&ビジネスメディアThe Vergeのトップに掲載されたそうだ。標準化された規格を使うことにより無駄な電力消費を減らすアプローチも、今後注目されていく分野となりそうだ(独自開発はその分開発コストも環境負荷もかかる)。
また、サムスンはパタゴニアと共同で、洗濯中のマイクロプラスチック放出を54%削減できる新しい洗濯技術「Less Microfiber Cycle」を開発し、発表していた。衣服に含まれ、洗濯物を通じて海や川、湖に放出されるマイクロプラスティックを日々の洗濯から軽減できるフィルターは、サムスンの製品以外でも利用できるそうだ。
パタゴニアのDirector of Philosophy(企業理念ディレクター)のヴィンセント・スタンリーは、世界的家電メーカーのサムスンが真剣に海洋プラスティック問題に取り組み、製品開発してくれたことに謝辞を述べ、「一社でも多くこの仕組みを利用する企業が増えることを望む」と壇上で語った。
最近では日本のメディアでも、洗濯時にマイクロプラスティックを放出しないティップスなどを紹介する記事を目にする機会が増えた。日本の家電メーカーも、このサムスンとパタゴニアが共同開発したフィルターを利用し、少しでも生活排水が海を汚さないような取り組みを広げてくれると嬉しい。
米国のシンクタンクPEW Research Centerのデータでは、Z世代は他の世代と比べて環境問題への関心が高く、アクションも頻繁であるという調査結果を発表している。
例えば日本の家電メーカーが上記の洗濯フィルターを採用するというニュースも、特にZ世代の間ではポジティブに語られる内容になるのではないか、とサムスンの発表を聞きながら考えた。
メーカーとして避けるべきは、競合を意識することで環境保全へのアクションが遅れたり、新たな環境負荷を生むこと。そして地球にとって本当に大切なこととは何か、を考えて具体的な行動を起こすことが、多くのユーザーにポジティブなブランドとして捉えられる要因になるだろう。