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2023.01.12 13:30

空気から飲料水、NASA発シャワー。テクノロジーで世界の課題解決に挑む「CES 2023レポート」

「空気から飲料水」を生み出すスタートアップ


今年のCES イノベーション・アワードを受賞したプロダクトは、水問題を扱うものが多かった。ニューヨークに本拠地をおくKara Waterは、世界初ミネラル豊富な9.2pHのアルカリイオン水をつくる「Air-to-Water ディスペンサー」で受賞。

同社は空気から飲料水を生成する技術を保有しており、「Air-to-Water ディスペンサー」では、一日あたり平均10リットルの水を生成できる。将来的には飲料水だけではなく、生活に必要な水もまかなえるように考えているという。

実は日本の家電メーカーが手がける除湿機も、空気中の水分を貯められる。それを飲料水にできれば世界課題解決への緒になり、CESでのアワード受賞も可能になるだろう。

NASA発 火星プロジェクトから生まれたシャワー


Amazonのブースでは、Orbital SystemsがNASAの火星プロジェクトから生まれたアイデアの一つ、「Orbital Shower」を展示していた。世界の水資源のうち、淡水として利用できるのはわずか3%で、うち3分の2は氷河で凍結している。私達が生活で使う水は非常に貴重なので、無駄なく使うためにシャワー水の再利用を実現していくそうだ。



日本のスタートアップWOTAも、同じコンセプトでポータブル水再生プラント「WOTA BOX」を開発。災害現場で仮設シャワーを提供している。水を有効に再利用するプロダクトは災害が多い日本だけではなく、水不足に悩む各国や将来的に宇宙への移住を意識する方々にニーズが高まりそうだ。

今年のベスト・オブ・イノベーションに選ばれたフレンチテックACWA Roboticsは、上下水道の配水を止めることなくパイプ内の老朽化データなどを取得し、デジタルツインを構築するソリューションを提供する。



「世界の水道事業者は、供給網の状態の悪さとノウハウ不足のために、毎年320億立方メートルのきれいな水を失っている」と同社は語る。国連の報告書によると、2030年には世界の水需要が供給を40%上回ると予測されており、都市の水インフラを守ることは、喫緊の世界的課題となっている。

日本ではGoogleに買収されたシャフトの加藤崇氏が作り、栗田工業に買収されたFRACTAが同様のビジネスを展開しているが、安心安全な生活水を得るための技術は、世界の各都市でより必要とされていきそうである。

CESの会場で出会ったWOTA創業者で、水の新規事業開発支援を行うAQUONIA代表 北川力氏は、水ビジネスの専門家の視点で次のように教えてくれた。

「日本企業は、これまでの研究や製品開発を通して、水問題解決に役立つ技術を多く保有しているはず。ただ、日本企業の特徴として、水に恵まれた環境に拠点を持つがゆえに水への意識が向きにくいことと、最先端の技術開発へのこだわり、2つのことがネックとなり、チャンスを逃しているように思う。

世界の水問題に対して意識を向け、それらの解決につながる自社の枯れた技術や埋もれた過去の技術にも焦点を当てて見るだけでも、大きな可能性があり、Air-to-Waterのような新たなマーケットを作る可能性があると思う」
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文=西村真里子

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