Generative AIはわたしたちの創造性と社会をどう変えるか


この問題を解決するには、AI生成された画像をチェックするAIの精度向上や、AI生成された画像には必ずそれと分かるように電子透かしを入れるなどの解決策が考えられますが、必ずそれをかいくぐるプレイヤーが現れるはずなので有効な解決策はまだ見つかっていません。




2つ目の問題が、雇用の喪失です。Generative AIが高度化し、これまで人が作業を担っていた部分もAIで自動化できるようになれば広範囲に雇用が失われる可能性があります。しかし、個人的には過去に蒸気機関やコンピューターが誕生した際にも同様の議論が生まれてはそれを乗り越えてきたように、短期的な調整期間を除いては、人がAI前提での社会での新しい労働スタイルに順応するのでそこまで大きな問題ではないのではないかと思っています。ただし、Artificial General Intelligenceが誕生してシンギュラリティを迎えるまでの猶予期間においての話ですが。

また3つ目の大きな問題は、知的財産の問題です。Generative AIは、既存のコンテンツを学習して新しいコンテンツを作成する仕組みになっているため、意匠を真似たコンテンツが生成されてしまったり、生成されたコンテンツは別の見た目になっていても生成過程でベースとなった著作物が間接的に侵害されているという状況も今後大きな問題になっていくと思います。

このようにGenerative AIは、そのすさまじい便利さに比例するように、それが生み出す倫理的な問題も非常に大きいです。この技術が発展し続ける過程において、こうした倫理的な側面においてもしっかりと議論を積み上げて善い形でこの技術が使われるようにしていくことが重要です。

Generative AIの時代に備えて我々個人がすべき3つのこと


Generative AIが発展している中で、わたしたち個人としてもその変化に備えることが重要です。ここでは、そのために今からできる3つのことをいくつか紹介します。

1つ目は、「Generative AIを使ってマシンとの対話に慣れておく」ことです。

Generative AIにプロンプトを入力し、出てきたアウトプットを見ながらプロンプトを調整していくというマシンとの会話を繰り返していくと、それぞれのAIの人柄というか癖のようなものが分かってきます。その癖を考慮しながら適切にマシンに言葉を届けていくことは習熟度の違いが出る一つのスキルだと言えるでしょう。そして、英会話と同じように、Generative AIとの会話量が増えれば増えるほど、Generative AIとの会話は上達していきます。

2つ目は、「教養を深める」ことです。

先述したように、AIに優れたコンテンツを作ってもらうためには「良い理想」を思い描き、それを「適切にマシンに伝える」ことが必要であり、そのためには「教養」というものが非常に大事になってきます。多くの場所に行き、多くの作品に触れるなどの行為を通して、自分の感性に合う場所やアーティスト、ブランドなどの「自分の好き」を集めておく。さらに自分の好きな領域について専門用語も含めて深く知っておくことで、より細かい指示をAIに伝えることができるようになります。

そして3つ目は「自分の感性を言語化する練習をする」ことです。

自分の頭の中に思い描いたイメージを言葉にして誰かに伝えてみてください。その人が想像したイメージはあなたと全く同じものだったでしょうか? 恐らく違ったものになっているでしょう。それくらい自分のイメージを言葉にして誰かに伝えるのは難しいことです。そして、上手く伝えられるようになればなるほど、AIもあなたのイメージに近いアウトプットを生成してくれます。

ここで、自分のイメージをより的確に相手に伝えられるようになるために自分が意識している2つのことを紹介します。

1つは映画や絵画などを観た後に、なるべくそこで感じたことを言葉にすることです。そのやり方は何でも良いのですが、とにかく自分の感性を言葉に変換していく練習が大事です。そして2つ目は、文学作品を読むことです。優れた小説や詩などの表現は、自分の感性をより的確に伝えるための語彙のレパートリーを広げてくれます。

さいごに


ここまでGenerative AIがアートやクリエイティブの世界に与える影響や、わたしたち個人のレベルでの変化や意識すべきことを考えてきました。これからGenerative AIの進化のスピードは指数関数的に上がっていき、わたしたちの社会は大きな変化を求められるでしょう。この技術の良い側面を最大限に活かすためにも今コラムで紹介した考えを参考にしていただければ幸いです。

文=梶谷健人

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事