Generative AIはわたしたちの創造性と社会をどう変えるか


Generative AI時代の人気ユーザーは「理想力」と「教養」を持った人たちになる


スマートフォンの普及によって、地球上ほぼすべての人がカメラマンになり、インターネットの海に写真と動画のコンテンツが爆発的に増えました。
それと同じようにGenerative AIが普及すると、地球上ほぼすべての人がアーティスト・クリエイターになり、インターネット上に人々が頭の中に思い描いた理想の画像、音楽、映像、3Dデータが溢れるようになります。

そしてスマートフォン時代に、人々が写真や映像などで「体験の記憶」というコンテンツを交換し合うソーシャルサービスが台頭したように、Generative AI時代には人々の「理想」をコンテンツとして交換し合うサービスが台頭するようになるでしょう。

では、そうした時代において、人間のクリエイティビティは必要とされなくなってしまうのでしょうか?言い換えれば、誰が作っても、AIによってコンテンツの良し悪しが変わらない時代が来てしまうでしょうか?

わたしはGenerative AI時代においても人間のクリエイティビティの重要性は残り続け、良い投稿ができるクリエイティブな人と、そうでない人の差は形が変化しつつも存在し続けると思います。

スマートフォン時代に「どんな場所に行くか」「そこでどう体験を記録するか」という2大パラメーターがコンテンツの良し悪しを左右したように、Generative AI時代には「どれだけの理想を思い描けるか」「それをどれだけマシンに適切に伝えられるか」という2大パラメーターがコンテンツの質を大きく左右するようになるはずです。

そして人々を魅了する「良い理想」を思い描くためにも、それを「適切にマシンに伝える」ためにもある種の「教養」というものが非常に大事になってくると思います。

例えば人の目を引く美術館の写真や3DワールドをAIで生成するためには、その人が過去に訪れたり知っている美術館や、知っている建築家やアーティストの数や質が、その理想の美術館の質や、それをマシンに伝える言葉の適切度に大きく作用します。

いままで「センスの良さ」と「手業の練度」という2つの能力の掛け算によってその人が生み出すコンテンツの質が決まっていたのに対して、純粋に「センスの良さ」がコンテンツの質に直結するようになり、その「センスの良さ」のためには良質なインプットや経験から来る「教養」が重要になってきます。

Generative AIが生み出す3つの倫理面の問題


ここまでGenerative AIによるネガティブな変化には触れてきませんでしたが、当然新しい技術は同時に新しい問題を生み出します。

まず1つ目が、フェイクニュースや非合法ポルノなどのディープフェーク問題の加速です。実際に過去にはヘイトスピーチをするオバマ大統領の動画が話題になり、有名芸能人の顔にすり替えたアダルトビデオが大量に生成されています。今まではディープフェークコンテンツを作るためには高いマシンやサーバー、一定のITリテラシーが必要でした。しかし、誰でも高度なディープフェークコンテンツを生成できるようになれば、その深刻さは今までの比ではなくなります。

実際に新しくLexicaからリリースされた写真生成AI「Lexica Aperture」を使うと以下のように写真と見分けのつかない画像を生成することができました。
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文=梶谷健人

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