ビジネス

2023.01.12

気候変動対策とSDGsの「相乗効果」は可能だ

竹本明生


「気候変動対策の社会的な貢献度を高めるために、企業には社会的・環境的な便益を同時に得ることができる取り組みに投資をし、気候変動対策とSDGsの取り組みの相乗効果を見える化し、企業の価値を向上させていくことが求められる」

複数の目標を同時に達成している具体例として、竹本はふたつの取り組みを挙げる。ひとつは、英ロンドンの低所得者用の住宅補助金だ。熱効率のよいヒートポンプや断熱材、ソーラーパネルの設置を支援することで、光熱費の高騰に苦しむ世帯の経済的な負担を軽減するだけではなく、CO2の排出量削減にも寄与する。

もうひとつの例は、米カルフォルニア州ロサンゼルス市で実施されている低所得者向け電気自動車(EV)のシェアリングサービスだ。ロサンゼルス市政府がカーシェアリングを手がける民間企業とパートナーシップを組み、大気汚染改善に貢献すると同時に、低所得者でもEVを利用できる社会の構築に寄与している。

「CO2排出ネットゼロだけではなく、誰ひとり取り残さない気候変動対策だという点を発信することで企業の社会的価値を高めることができる」

そのためには、「取り組み状況を可視化することが重要だ」と竹本は指摘する。定量的なデータで示すのがわかりやすいが、データの取得が難しい場合には定性的な調査に基づく情報開示でも構わない。自社の取り組みが、どの社会課題にどれだけのインパクトをもたらしているのか。トレードオフではなく、シナジーを生み出す取り組みになっているのかを示すことは、これからのグローバル企業に不可欠といえる。

竹本明生◎環境省を経て、2018年から地球環境ファシリティで途上国の環境保全プロジェクトのファイナンスを担当。20年6月より現職。気候変動対策とSDGsのシナジー等の政策研究や教育活動に従事。

文=中田浩子

この記事は 「Forbes JAPAN No.100 2022年12月号(2022/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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