先日旅行に行ったとき、京都で「マガザンキョウト」というホテルを経営している岩崎達也さんとお話をする機会がありました。マガザンキョウトは「泊まれる雑誌」というコンセプトで、季節ごとに異なるトピックのモノ・コトがホテル内に特集されるという気鋭のホテル。文字通り雑誌の特集のように、京都のカルチャーに実際に触れたり、使えたり、買えたりと、五感で感じられるさまざまな体験が詰まった場所としてSNSで話題を呼んでいます。
そんな岩崎さんにマガザンキョウトのアイデアを思いついたきっかけを伺ってみると、驚きの回答が。なんと雑誌とホテルが共に「滞在時間が長い」という共通点から生まれたそうです。言われてみれば確かに、その世界観のなかで長い時間を過ごすという意味では、近い体験かもしれません。
「雑誌とホテルは滞在時間が長い」という共通点から生まれた、泊まれる雑誌「マガザンキョウト」。
その話を聞いたときに思い出したのが、富士フイルムの化粧品ブランド「アスタリフト」。フィルム会社がなぜ化粧品を? と思って調べてみると、なんとフィルムも肌も「主成分がコラーゲンである」という共通点がきっかけとなり、生まれてきたそうです。また、少し前に、多くのお茶屋さんで、お茶とのりが一緒に売っているのを不思議に思って調べたことがあるのですが、実はそれも「乾燥と保存の方法が一緒」という共通点から始まり、ビジネスの領域を広げるために、どちらも取り扱っていたという説があるそうです。
「肌とフィルムは主成分がコラーゲン」という共通点から生まれた、富士フイルム「アスタリフト」。
ここまでの話で共通するのは、いずれも一風変わった共通点「共通変」の発見が新しいビジネスが生まれる転換点になっているということ。0から新しいアイデアを生むのは難しいけど、共通変を足がかりに発想すると、新しい価値を発見でき、事業をいままでと違う領域にジャンプさせられるかもしれません。でも、いきなり変な共通点を見つけろと言われても難しいもの。なので、筆者がこの発想法で生み出したプロジェクトを例に、「共通変」のやり方とコツを紹介します。
1. 要素分解する
最初にやるのは、アイデアを考える対象を選び、素材、動作、形状などの要素に分解することです。
このとき、対象は自社事業、プロダクトなど、いま会社や自身が取り組んでいる領域のものにすると、考えやすいと思います。それが決まったら、要素分解していきます。例えば、今回は「ペットボトル」を対象として選んでみることにします。ボトルは「プラスチック」でできている、キャップは「回す」もの、ボトルは液体を「入れる」もの……といったように、思いついたものを列挙しましょう。ここでのコツは数を出すことです。細かく観察し、どんな小さな側面もとりあえずメモするようにしましょう。