この研究は、イリノイ州シカゴにある米ラッシュ大学医療センターの研究チームが実施したものだ。認知症ではない81歳以上の高齢者961人を対象に、調査が行なわれた。
参加者は毎年、特定の食品を口にする頻度についてのアンケート調査に回答した。調査期間は、平均で7年間だった。また、認知力テストと記憶力テストも受けてもらった。
フラボノイドは、植物色素に含まれる、抗酸化作用をもつ物質の総称だ。米国人は一般的にフラボノイドを、1日平均でおよそ16mgから20mg摂取しているが、この研究に参加した人の平均摂取量は10mgだった。
年齢や性別、喫煙歴といった、記憶力の低下を左右する他の要素を調整したところ、フラボノイドの摂取量が最も多かった人の認知テストの平均スコアは、フラボノイドの摂取量が最も少なかった人の平均スコアよりも緩やかに低下していたことが明らかになった。
フラボノイドのなかでも、ケンペロールと呼ばれる物質が、いちばん効果が高いことがわかった。これが多く含まれている食品は、ケール、豆、紅茶、ホウレンソウ、ブロッコリーなどだ。
研究論文共著者のトーマス・ホランド(Thomas Holland)は、この研究は「特定の食品を摂取すると、認知機能の低下ペースが遅くなる」ことを示唆しているものの、抗酸化作用をもつフラボノイドの摂取と、認知機能の低下のペースダウンに関係があることを無条件で立証しているわけではないと述べている。
米国アルツハイマー協会によれば、アルツハイマー病やその他の認知症によって米国が受ける損失額は、2022年末現在で3210億ドルに上る。その損失額は、2050年には1兆ドルを超える見込みだ。
アルツハイマー病などの認知疾患を引き起こす原因は何なのか、認知機能の低下に影響を及ぼす特定の要素はあるのか、といったことについては、研究と議論が続けられている。2022年11月末には、エーザイと米製薬大手バイオジェンが共同で実施した新薬「レカネマブ」の臨床試験で、認知機能の低下を遅らせる効果が示されたが、決定的な結果ではない。
米国立老化研究所(NIA)は、運動量を増やしたり、健全な血圧を維持したり、記憶や論理的思考、処理速度など認知力を使う作業を行ったりすると、認知機能の低下を遅らせることにつながると提案している。
アルツハイマー病の研究(とくに早期発見)については、ジェフ・ベゾスやビル・ゲイツ、実業家ロナルド・ローダーなどの富豪が力を入れており、「ベンチャー・フィランソロピー」(成長性の高い非営利組織や社会的企業に対して資金提供と経営支援を行うことで事業の成長を促し、社会課題解決を加速させる仕組み)に多額を出資している。こうした取り組みでは、アルツハイマー病創薬基金(ADDF)などの団体に投資して得た利益を、寄付者に戻さず、再び団体に投資している。
(forbes.com 原文)