「気候危機に対するイスラエルの最大の貢献は、気候関連の革新的な技術によってそれを解決してきたことです」。イスラエルの気候変動・持続可能性担当特使を務めるギデオン・ベハルは、先ごろ筆者が行ったインタビューでそう胸を張った。「実用的で手ごろな、そしてスケーラブル(拡張可能)なソリューション」を開発してきたと述べ、ほかの国と協力している点も強調した。
飲料水の85%を海水から製造
イスラエルは排水の95%を浄化して再利用しており、漏水などの水の無駄も最小限に抑えている。すべての水は計量されており、いつどこでロスが発生したかをモニターで把握できる仕組みになっている。おかげで利用者は水道料金を節約でき、政府も水道への補助金を廃止し、料金収入はインフラへの再投資に回せるようになっている。
中東は飲料水の供給が限られる地域である。豊富にある水といえば海水しかないという国も多い。それを利用しているのがイスラエルだ。イスラエルは淡水化プラント使って、飲料水の85%を地中海の海水からつくり出している。
その技術は国外でも採用されている。たとえば米カリフォルニア州サンタバーバラ市では、イスラエル企業IDEアメリカズの技術供与を受けるプラント「ポセイドン」で、市の需要の30%に相当する日量約300万ガロン(約1136万リットル)の水がつくられている。カリフォルニア州ではこのほか、カールスバッドにもIDEの施設がある。
米国では「ギガソーラー」建設
イスラエルが強みを持つのは水処理技術だけではない。
イスラエルの企業であるドラル・リニューアブルズは、米インディアナ州で1.3ギガワット級の大規模な太陽光発電所「マンモスソーラー」を建設している。約15億ドル(約2000億円)を投じるこの施設は2024年に完成する予定だ。
顧客にはバンク・オブ・アメリカやPNCバンクなどが名を連ねる。バンク・オブ・アメリカはデラウェア州、ペンシルベニア州、バージニア州での事業活動に要する電力の17%をマンモスソーラーから調達する計画だという。
マンモスソーラーによって年間4万トンの温室効果ガス削減と10億ガロン(約38億リットル)の水節約が見込まれている。ドラル米国法人のニック・コーエン最高経営責任者(CEO)は「インディアナ州や中西部での太陽光発電のモデルになる」と力を込める。