ビジネス

2022.12.29

Web3時代のブランドの作り方 現役NFTクリエイターと売り手に聞く

個展で展示したNFT作品。岡山佳孝氏(右)とtama5氏

Web3事業を手がけているMinto代表の水野和寛が、業界のオピニオンリーダーを招き「Web3 × クリエイターの未来」をテーマとした対談をお届けする本連載。

前回に続き

・岡山佳孝氏 海外パブリックブロックチェーンのマーケティングチームに所属しながら、NFTアートのオークション「_auction」のファウンダー
・tama5氏 イラストレーターで近年NFTの世界にも進出しているクリエイター

に話を聞いた。


水野:Web3作品のブランド醸成やコミュニティ運営に不可欠なものはなんでしょうか?

岡山:2つあると思います。1つは、一次情報を大切にすること。僕は、これまでの経験上、事業側の知見は持っていますが、実際にNFTを作り販売しているわけではありません。だからこそ、tama5さんのようなクリエイター方を巻き込み、意見を取り入れながらプロジェクトを推進するようにしていました。

もう1つは、世界に向けた発信や行動もすること。ブロックチェーンを使った取引は、モノやお金が国を超えて流通し、流通している金額が市場そのものとなります。なので、活動を国や地域で区切る必要はないと思います。

先日、tama5さんの作品の個展が開催された際には、noteに、日本語と英語で3つずつ告知記事を書きました。また、_auctionには、NFTのコレクションを自分たちで出している「Monkey Kingdom」という東南アジアのコミュニティチームや、「uwucrew」という北米のコミュニティチームにも、パートナーとして加わってもらっています。

水野:徐々に海外進出、という流れではないんですね。

岡山:日本でやると、日本のニーズに最適化されすぎてしまうのではないかと……いきなりグローバルなチームを巻き込んでやりました。

僕はクリエイターさんが、_auctionをきっかけにメディアに載ったり、大企業からWeb3のコラボレーション案件が来たりと、国内外から反響を得るところまで余波が生まれるといいなと思っています。つまり、“価値が上がること”と”価値を認められること”の両輪が達成されることを目指しているんです。

とはいえ正直、_auctionの運営には不安もあります。オークションって、たとえ過去に高値がついたクリエイターさんでも、その次は半値でしか売れないといったことが、往々にしてあります。

tama5:でもそれは、作品の価値が下がってるわけではないんですよね。

どうしても、アートに対する値段はその時の需給バランスに依存してしまう。ただ、私はクリエイターとして、値段よりも「その作品に対してどうしても欲しい人がいる」こと自体が価値だと思っています。

岡山:さらに、そういった応援者の想いが、どう派生していくか。それが大事だと考えています。単発、少数ではなく、関係値や規模が時間軸上に乗り、大きく循環していくことが理想です。人の想いやお金が正しく流通するエコシステムを成すような構造まで引き上げられたらいいなと。

もちろんオークションなので、高値がつくことは大事です。しかし、その背後にあるサイクルやエコシステムを活性化させたり、流動的にするためにオークションが存在しているんです。
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文=水野和寛 編集=露原直人

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