なぜ、わざわざ人間の動物に対する感じ方を理解しようとするのか?
「私たちの非ヒト動物に対する道徳的判断の位置づけを理解することは、最終的に人間が世界を共有している物たちとの人的交流の特質を定義するために役立つと考えています」とパティナダン博士はいう。
この予備研究に議論のあるSCMアプローチを使ったことで、動物の明確なグループ分けがなされ、それぞれのグループに先入観による感じ方が反映された。しかし最も興味深い発見は、道徳的に異なる性質をもつ人たちのグループであるベジタリアン、動物活動家および大学生が、本研究で扱ったさまざまな動物に対して似たような固定観念を持っていたことだ。
これは予備実験であるため、たとえば女性と若い被験者が多数を占めているといったサンプリングの問題がある。もう1つの問題は地域だ。被験者の思想的観点はさまざまだが、全員が東南アジアの小さな領域から選ばれている。文化が違えば動物に対する意識が異なる可能性は高いため、異なる文化的背景の間のさまざまな動物に対する意識の類似点と相違点を見つけ出すために、研究チームは同様の研究を欧米人に対して実施することを検討している。
「人の非ヒト動物に関する倫理的イデオロギーは、さまざまな動物種に自ら与えている社会的順列には影響を与えていないようです」とパティナダン博士はいう。「研究結果は非ヒト動物に対する人間的感情全般が、適応的社会的価値の判断や順列の『精神的ショートカット』に由来している可能性を示唆しています」
こうした精神的ショートカットは、多くの人々が動物たちに対して、自分の好き嫌いを正当化するために、異なる評価、ときには矛盾する評価をつけることを露呈させた。このことは、なぜ私たちがある動物種を大切に思い、別の動物種を傷つけたり殺したりするかの説明になるかもれない。研究は私たちが地球を共有している動物たちを理解したり感じたりする際、道徳的矛盾を露骨に無視してしまうという人間の驚くべき能力を浮き彫りにした。同時に、被験者が特定の動物種に対して持つ感情が、その動物に対する倫理的あるいは道徳的観点とは、ある程度まで、無関係だったことは指摘しておくべきだろう。こうした「精神的ショートカット」は、どの動物を保護すべきかを選ぶ際にも深遠な影響を与える。
「絶滅危惧種を保護するための寄付の対象を、トラにするか、より絶滅危機が迫るゲンゴロウにするかを選ぶとき、人は大型猫類の威厳に引っ張られるのが普通です」
どちらを保護する? 絶滅危惧種のトラ、それともより危機状態にある水生甲虫のゲンゴロウ?(Getty Images)
出典:Paul V. Patinadan and Denise B. Dillon (2022). Friends, food or worth fighting for? A proposed stereotype content model for nonhuman animals, Human–Animal Interactions | doi:10.1079/hai.2022.0023
(forbes.com 原文)