ビジネス

2022.12.22

サイバー藤田晋氏ら語る「後継者育成」 経験や勘の言語化が重要

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外部人材の起用は難しい


──次世代への継承は行っていますか。

辻:僕はまだ46歳で、創業10年ということもあり、後継者問題は喫緊の課題というわけではありません。ただ、全社でも2000人ほどと組織が大きくなり、マネジメント層育成の重要性が増しています。

具体的には「リーダーシップフォーワードプログラム」として、次世代のリーダー育成のために経営陣が時間をかけています。リーダーというのは、基本的に仕事の経験によって育つと思いますが、(知識などの)インプットも重要なので、プログラムを進めています。

藤田:僕は4年後に会長に就任すると、社内ですでに発表しています。会長になると決意したのが、社内資料を見ている時に「10年後に藤田晋は60歳」と書かれているのを目にしたときでした。

今までの経験から10年はあっという間で、60歳からでは仕事の引き継ぎはできないなと。社長を続ければ続けるほど、自分だけに情報や経験が集約され、僕でなければ経営できない会社になっている。​今は16人の次期社長候補がちょうど研修プログラムを受けている段階です。

創業者が外部から後継者を招いたものの、うまく行かずに結局追い出してしまうことがありますよね。やっぱりそれは無理だなと。創業者が健在の企業は、創業者の頭の中でつじつまが合って成立している場合が多くあります。

後継者というと「次期社長は誰だ」という話題に注目されがちですが、重要なのは、創業者の経験や勘を言語化して引き継ぎ可能なものにして伝えていくこと。そこに気づいてから、スムーズにバトンを渡すために、“引き継ぎ書”を作り始めましたね。

僕は26歳のときに上場しましたが「お前は0→1が得意なんだから、経営者を代われ」とさんざん言われました。ただ、当時の日本はプロ経営者が皆無だったので、自分自身が立ち上げ屋から経営者へと進化する以外に方法はありませんでした。

あれから20年以上たった今、日本にプロ経営者がいるのであれば、情熱のある若者がゼロから起業し、規模拡大の段階で外部人材にバトンタッチする選択肢もあります。僕としても、大きくしてもらえるのであれば、ぜひ誰かにやってもらいたいくらいです(笑)。

──“引き継ぎ書”はどのように作り上げているのでしょうか。

藤田:僕や役員の取材に同席してきた広報を中心に、どのように僕が意思決定をしてきたかを言語化している形です。意思決定の際にわざわざ説明してこなかった思考回路や優先順位付け、決定プロセスを、今になって書き加えているとも言えますね。

もちろん、次期社長には“引き継ぎ書”を読んで、同じことをやってほしいわけではありません。まず、どのように会社として成立しているかを深く理解したうえで、“守破離”のように自分のやり方を出していけばいいと考えています。

引き継ぎは“誰を選ぶか”より、“引き継ぎ可能な会社”にすることが重要です。

文=小谷紘友 編集=露原直人

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