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2022.12.17 14:30

気候変動による寒波で心疾患を抱える人の死亡リスクが37%増加、東アジアでも

Getty Images

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医学誌『Circulation』に掲載された新たな研究によると、1979年から2019年にかけて27カ国567都市で発生した心疾患による死亡の主な増加要因は、熱波や極端に寒い天候にさらされたことであることが明らかになった。さらに、心疾患を抱える人は高温に弱く、穏やかな天候の日に比べて熱波時の突然死のリスクが12%高いこともわかった。一方、極端に寒い日は死亡リスクが37%高かった。

共同執筆者の米メリーランド大学医学部循環器疾患フェローであるハイサム・クライシャは発表資料で「心疾患を抱える人に気温の影響がより顕著に表れる理由は不明だが、進行性という病気の性質によるものかもしれない」と述べた。「心疾患の患者の4人に1人は退院後30日以内に再入院し、診断から10年後に生存しているのはわずか20%だ」と説明した。

研究でクライシャらは、40年間の世界の3200万人の心疾患による死亡を綿密に分析した。このデータは、気候変動が公衆衛生におよぼす影響や、環境ストレス要因がどのように死亡リスクを高めているのかを研究しているさまざまな分野の専門家からなる「MCC(Multi-Country Multi-City) Collaborative Research Network」から入手したものだ。研究チームはこのデータをさらに拡大して調査を行った。

その結果、ボルチモアでは心疾患による死亡者1000人あたり、極寒の日の死亡者が9人強増えることがわかった。しかし暑さによる死亡は2.2人の増加にすぎなかった。

熱波の主な原因は気候変動であることは広く知られているが、地球の気温が上昇すると北半球、特に東アジア、北米、欧州で極めて寒くなることがあるという事実はあまり知られていない。化石燃料の燃焼による温室効果ガスの排出量が多いため北極では現在、世界の他の地域の3倍の速さで温暖化が進み、従来みられた気象パターンである極渦(北極の上空にできる大規模な気流の渦)が非常に不安定になっている。

その結果、極寒の気候が北極圏から移動し、低緯度の地域は冬になると以前よりはるかに寒くなる。医学誌『Lancet』に発表された2021年の研究では、2019年に9カ国で極度の低温に関連した平均死亡率が熱関連の死亡率を上回ったと報告されている。そして2022年に『Environmental Health Perspectives』に発表された別の研究では、スイスの1969年から2017年までの熱関連の死亡の割合がわずか0.28%だったのに対し、寒さ関連の死亡は約9%だったことが明らかになった。

2021年に『Science』に発表された研究では、バレンツ海やカラ海(2つとも北極海の延長だ)の氷が急速に溶け、これがシベリアでの降雪の増加につながり、最終的には極寒の気候が米国まで移動して、2021年2月にテキサス州を襲った寒波につながったとみられることを詳述している。

「気候変動が心疾患に与える影響を社会が緩和できるような対策を立てることが急務だ」とクライシャは指摘している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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