過去の例が示すとおり、「推奨」と「義務」ではそれに従う人の数が大きく異なる。そこで問題となるのは、マスクの有効性は、「着用する人の割合によって変わる」ということだ。
米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されたレビュー論文は、分析の結果について次のように述べている。
「実験室と臨床状況のどちらにおいても、証拠の圧倒的多数は、マスクの着用は感染者の呼吸器微粒子の伝搬を減少させることにより、接触あたりの感染の可能性を低下させることを示している」「多くの人が指示に従い公共の場でマスクを着用するのであれば、感染拡大を抑制するための最も効果的な方法となる」
カギを握るのは、後段の「多くの人が従うなら」という部分だ。前述のとおり、マスク着用の有効性は、どれだけの人が着用するかということに大きく左右される。
100%有効な方法はない。食事をするときなど、わずかな間でもマスクを外さなければならない場面はあるだろう。ただ、マスクをしている人が周囲にどれだけいるか、その割合によって、空気中のウイルス量、そして感染リスクの高さも変わる。
新型コロナウイルスのパンデミックが発生して以来、米国が直面してきた最大の課題の一つは、感染対策は個人の選択の問題ではなく、集団ベースの行動の問題だということを、すべての人に理解してもらうことだった。自分たちの安全がお互いに依存しているものだと分かってもらうことさえできていれば、パンデミックはまったく異なる方向に展開していたかもしれない。
(forbes.com 原文)