経済・社会

2022.12.14 11:30

米市民の間で「またマスクをしよう」が呼び掛けられる理由

ニューヨークのタイムズスクエアを訪れるマスク姿の女性。(Photo by Leonardo Munoz/VIEWpress)

ニューヨークのタイムズスクエアを訪れるマスク姿の女性。(Photo by Leonardo Munoz/VIEWpress)

米国では10月中旬以降、「トリプルデミック」といわれる状況が続いている。新型コロナウイルスのパンデミックが収束しないなか、同時にインフルエンザとRSウイルスの感染が拡大。3種類のウイルスが流行している状況が、そのように呼ばれている。

これを、何とか抑える方法はないものだろうか。それも、あまり費用がかからない方法で──。考えてみると、すぐに思いつく方法がある。マスクだ。新型コロナウイルスの感染者が急増し始めた一昨年以降、政治家たちが着用の問題を政治的に利用し始める前まで、米国でも多くの人が着用していたマスクだ。

トリプルデミックに見舞われる現在、米国では公衆衛生や科学の専門家たち、そしてこの状況を懸念する市民たちが、「#BringBackMasks(またマスクをしよう)」のハッシュタグを使い、企業や政府機関、そしてほかの人々に対し、マスク着用の再開を呼び掛けている。

トランプ政権(当時)に対し、科学に基づく政策を求めるために行われた「科学のためのデモ行進」を主導したコロンビア大学アーヴィング・メディカル・センターのサイエンス・コミュニケーター(科学関連の問題が専門の広報担当者)、ラッキー・トラン博士は12月9日以降、このハッシュタグを使い、ツイッターでこう指摘している。

「米疾病対策センター(CDC)によると、ニューヨーク市では5つの行政区すべてにおいて、市中感染レベルが最高の分類になっている」

「CDCは市中感染レベルが高い地域に対し、屋内では“すべての人”がマスクを着用すべきだとしている。ニューヨークはCDCのガイドラインに従い、マスク着用を今すぐ、再び義務化する必要がある」

これに対し、シンクタンクのニューイングランド・コンプレックス・システムズ研究所で新型コロナウイルス・リスク対策タスクフォースの主任を務める疫学者のエリック・ファイグルディン博士は、ニューヨーク市保健局は屋内の公共の場では常にマスクを着用するよう「推奨する勧告を出している」と指摘した。

ここで重要なのは、当局はマスクの着用を「推奨している」のであり、「義務付けている」わけではないということだ。
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編集=木内涼子

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