「この会社のコーポレートガバナンスは、世間から称賛されるものだっただろう」とミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスのエリック・ゴードン(Erik Gordon)教授はフォーブスに話す。
というのも、セールスフォース幹部の給与はほとんど保証されていなかったからだ。そのかわりにセールスフォースは、幹部給与を株価のパフォーマンスとがっちりと結びつけていた。
だが、そうした方針は、株式市場の流れが変わると裏目に出ることがある。パフォーマンスの指標として株価に頼っている企業にとって、人材を引き留めておくのが難しくなりかねないのだ。
「その報酬体系では、従業員をつなぎとめる効果がなくなっているようだ」とゴードンはフォーブスに語った。
セールスフォースは過去3年間、154~215ドルの行使価格で幹部向けオプションを提供していた。2018年以降で最低となる133ドルという現在の株価では、最も安いトランシェでさえ、どうにか儲けを出すには、株価が16%上昇しなければならない。そして、前年に付与されたオプションが何らかの価値を出すためには、61%の上昇が必要となる。
2022年のセールスフォース株は、S&P 500インデックスのなかでも、特にパフォーマンスの低い部類に入っている。そのため現時点では、もらえるものをもらっておくのが最善のシナリオのように見える。
もろもろを考えあわせると、セールスフォース幹部は、船から飛び降りているというよりは、餌がついた釣り糸をすっぱり切っているのかもしれない。
セールスフォースにコメントを求めたが、返答は得られなかった。
ゴードンは、フォーブスに次のように話した。「報酬も一役買っているが、他にも語るべきものはあると思う。とはいえ大局的に見れば、過去10年の超強気相場が、人事マネージャーの仕事を楽にしていたのは確かだ。目の前に株式をぶら下げさえすれば、採用候補者は契約に署名した。だから、人事マネージャーが考えなければいけないことはあまりなかった」
「いまでは、最高の人材を維持したければ、一方通行の市場だけでなく、浮き沈みの激しい株式市場でもうまく機能するプランを練らなければならない」
(forbes.com 原文)